歴史学研究16団体が「慰安婦問題」で声明

歴史学研究会・日本史研究会など日本の歴史学研究16団体が5月25日、都内で会見を開き、旧日本軍の「慰安婦問題」をめぐり、日本の加害の事実や被害者と誠実に向き合うよう一部の政治家やメディアに求める声明を発表しました。

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『朝日新聞』2015年5月26日付朝刊

声明では、朝日新聞が昨年、慰安婦問題をめぐる一部記事を取り消したことをきっかけに、「慰安婦強制連行の事実が根拠を失ったかのような言動が、一部の政治家やメディアの間に見られる」と指摘したうえで、「強制連行は本人の意思に反した連行も含むと解されるべきだ」としています。また、近年の研究は「動員された女性たちが、人権を蹂躙された性奴隷の状態に置かれていたことを明らかにしている」とし、「政治的・社会的背景を捨象することは、問題の全体像から目を背けることにほかならない」と訴えています。さらに、歴史研究と教育を通じて「慰安婦問題」を記憶にとどめ、「過ちをくり返さない姿勢」を示すよう求めています。

歴史学研究会は昨年10月に単独で、同じ趣旨の声明を出していますが、幅広い研究団体の連名で改めて見解を表明することにしたものです。
この声明に書かれている見解は、大多数の研究者の意思を示すもので、一部の政治家やメディアは、研究成果をふまえずに「慰安婦問題」にいて無責任な発言や報道をすべきではありません。日本近現代史を研究する1人として、この声明に全面的に同意するものです。

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歴史学研究16団体の声明は、次の通りです。

「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明

『朝日新聞』による2014年8月の記事取り消しを契機として、日本軍「慰安婦」強制連行の事実が根拠を失ったかのような言動が、一部の政治家やメディアの間に見られる。われわれ日本の歴史学会・歴史教育者団体は、こうした不当な見解に対して、以下の3つの問題を指摘する。

第一に、日本軍が「慰安婦」の強制連行に関与したことを認めた日本政府の見解表明(河野談話)は、当該記事やそのもととなった吉田清治による証言を根拠になされたものではない。したがって、記事の取り消しによって河野談話の根拠が崩れたことにはならない。強制連行された「慰安婦」の存在は、これまでに多くの史料と研究によって実証されてきた。強制連行は、たんに強引に連れ去る事例(インドネシア・スマラン、中国・山西省で確認、朝鮮半島にも多くの証言が存在)に限定されるべきではなく、本人の意思に反した連行の事例(朝鮮半島をはじめ広域で確認)も含むものと理解されるべきである。

第二に、「慰安婦」とされた女性は、性奴隷として筆舌に尽くしがたい暴力を受けた。近年の歴史研究は、動員過程の強制性のみならず、動員された女性たちが、人権を蹂躙された性奴隷の状態に置かれていたことを明らかにしている。さらに、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配・差別構造との連関も指摘されている。たとえ性売買の契約があったとしても、その背後には不平等で不公正な構造が存在したのであり、かかる政治的・社会的背景を捨象することは、問題の全体像から目を背けることに他ならない。

第三に、一部マスメディアによる、「誤報」をことさらに強調した報道によって、「慰安婦」問題と関わる大学教員とその所属機関に、辞職や講義の中止を求める脅迫などの不当な攻撃が及んでいる。これは学問の自由に対する侵害であり、断じて認めるわけにはいかない。

日本軍「慰安婦」問題に関し、事実から目をそらす無責任な態度を一部の政治家やメディアがとり続けるならば、それは日本が人権を尊重しないことを国際的に発信するに等しい。また、こうした態度が、過酷な被害に遭った日本軍性奴隷制度の被害者の尊厳を、さらに蹂躙することになる。今求められているのは、河野談話にもある、歴史研究・教育をとおして、かかる問題を記憶にとどめ、過ちをくり返さない姿勢である。

当該政治家やメディアに対し、過去の加害の事実、およびその被害者と真摯に向き合うことを、あらためて求める。

2015年5月25日

歴史学関係16団体      

日本歴史学協会、大阪歴史学会、九州歴史科学研究会、専修大学歴史学会、総合女性史学会、朝鮮史研究会幹事会、 東京学芸大学史学会、東京歴史科学研究会、名古屋歴史科学研究会、日本史研究会、日本史攷究会、日本思想史研究会(京都)、福島大学史学会、歴史科学協議会、歴史学研究会、歴史教育者協議会

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