『ちひろ、らいてう、戦没画学生の命を受け継ぐ』

小森陽一・松本猛・窪島誠一郎『ちひろ、らいてう、戦没画学生の命を受け継ぐ』(かもがわ出版、2021年)が出版されたのを知り、さっそく読みました。

0101.jpg

本書は、2020年9月26日から28日に実施された、旅行会社「たびせん・つなぐ」が企画した「信州安曇野・上田 文学美術紀行」の記録です。このツアーで訪れた安曇野ちひろ美術館、上田のらいてうの家、戦没画学生慰霊美術館「無言館」とその過程で行われた小森陽一・松本猛・窪島誠一郎によるトーク、対談が収録されています。

子どもの絵本で新しい境地を開いた画家いわさきちひろ、雑誌『青鞜』を創刊し「原始、女性は太陽であった」という名言で知られる女性解放運動家平塚らいてう、画家を志しながら戦場に散っていった戦没画学生たちが生きてきた時代を振り返り、当時の思想や芸術・文化に目を向けながら、今日の日本において私たちはそこからなにを何を受け継ぐべきかを、全体を貫くテーマとして語られています。

本書で語られている安曇野ちひろ美術館と無言館は見学したことがあります。特に無言館は、中央大学の講師をしていたときに毎年夏、学生を連れて研修旅行で訪れていました。
窪島さんと小森さんは、対談の中で、村山槐多、山本鼎、タカクラ・テルらの遇然と必然の”あわい”結び合わせたところに無言館が建っていることを語っていますが、とても興味深い指摘でした。

小森さんは、まとめにあたる終章「近代日本の歴史と文化をつなげて考える」の中で、無言館の建っている上田地域は、山本鼎の自由画教育運動や農民美術運動が、また土田杏村やタカクラ・テルが指導した自由大学運動が展開されたところであり、それが治安維持法の制定により、共産党や社会主義運動が弾圧され、山本宣治が暗殺され、その山宣碑が別所温泉の地に建てられていること、そして太平洋戦争に突き進み、多くの美大生が戦争にかり出されて命を失ったことを指摘するとともに、その時代にいわさきちひろや平塚らいてうも関わり合いがあることを語っています。大正デモクラシーの時代に人と人との結びつきが織りなすものを改めて考える必要があると感じました。

ただ自由大学運動に触れた部分で、「東京にいた髙倉テルが上田に来て自由大学構想を打ち上げ、そこに京都大学などから講師を招きます」(138頁)とあるのは誤りで、自由大学構想が生まれた当時、タカクラは東京ではなく滋賀県石山に住んでいました。それに自由大学構想は、この上田の地にいた農村青年山越脩蔵と京都にいた土田杏村との交流の中で生まれたものであり、タカクラはそのあと土田から協力を依頼されて自由大学の講師になり、のち別所温泉に移住してきたものです。したがって、「タカクラ・テルが組織者となり、土田杏村という哲学者に指導を仰ぐことになります」(145頁)と書かれているのも誤りです。また、自由大学運動は各地に広がりますが、新潟県の堀之内町のほか「犬が崎村」(146頁)があげられていますが、これは「伊米ヶ崎村」の誤りです。せっかく自由大学運動に触れていただいただけに史実が誤って語られているのは残念でした。
今年、上田自由大学が創設されてから100年になります。9月11日には上田で上田自由大学100年の記念大会が開催されます。この自由大学運動から私たちが受け継ぐべきものは何かについても、ぜひ考えていきたいと思っています。

この記事へのコメント

深町 稔
2021年03月18日 18:06
山野晴雄様

『ちひろ、らいてう、戦没画学生の命を受け継ぐ』へのコメント、読ませていただきました。取り上げられるのはありがたくても、まちがいがあるのはいただけませんね。おそらく編集者が若くて、そこまで確認の調べをしてない…いや、できなかったのではないかと思います。
でも、話す方がしっかり話すべきです。そして、著者校正の段階でチエックを入れるべきです。思い込みを指摘されたり、揚げ足をとられたり、著者たちはあまり経験がないのかもしれません。しかし、これが孫引き引用されることもあり得ますし、恥をかくのは著者たちです。
チャンスをつくって窪島さんに通じるように計らいます。

 深町稔
王島将春
2021年03月18日 18:58
はじめまして。福井市在住の王島将春(おうしままさはる)と言います。聖書預言を伝える活動をしています。

間もなく、エゼキエル書38章に書かれている通り、ロシア・トルコ・イラン・スーダン・リビアが、イスラエルを攻撃します。そして、マタイの福音書24章に書かれている通り、世界中からクリスチャンが消えます。その前に、キリストに悔い改めて下さい。ヨハネの黙示録6章から19章を読めば分かりますが、携挙に取り残された後の7年間の患難時代は、苦痛と迫害の時代です。患難時代を経験しなくても良いように、携挙が起きる前に救われてください。