中教審の教員の働き方改革答申素案を読む

文科省が公表した「教員勤務実態調査(2016年度)」(2017年)によれば、残業時間の過労死ライン(月80時間以上)である週60時間以上働く公立学校の教員の割合は、小学校で33.5%、中学校で55.7%と、民間企業と比較しても高くなっています。過労死した教員も少なくなく、うつ病などの精神疾患で休職を余儀なくされる教員も毎年5000人前後を数えています。また、新学習指導要領の改訂により、小学校における外国語活動の導入、小・中学校の道徳の教科化やアクティブ・ラーニングによる指導への対応など、今後も教員の負担は増える一方となっています。
こうした教員の超多忙化が続けば,教育の質に与える影響も無視できません。

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『朝日新聞』2018年12月6日夕刊

こうした状況の下で中教審は、12月6日、教員の長時間労働などの解消に向けた答申素案を示しました。
主な改革案のポイントは、次のような項目が挙げられます。
(1)時間外勤務を原則として「月45時間、年360時間」以内とするガイドラインを設ける。
(2)時間外勤務も一部を除いて「自発的」とされていた授業準備や部活動などの業務を「勤務時間」として認める。
(3)繁閑にあわせ年単位で勤務時間を調整し、休日のまとめ取りをする「変形労働時間制」の導入を認める。
(4)教員・学校・地域が関わる業務を整理し、教員が行うべき業務を明確化する。

教員の時間外労働を「月45時間まで」と上限を設けたことは評価できますが、「給特法」の見直しは先送りにされました。
このため、残業代を出さない代わりに給料月額の4%を「教職調整額」として出すという現状は変わらないままになりました。 「定額働かせ放題」が続く現状を変えようとする意思が文科省にも中教審にもないとしか言いようがありません。

これまで時間外に行われていた授業準備や部活動指導などの業務を「勤務時間」として認めたこと、また、教員の業務量を軽減するために業務の仕分けを行ったことは評価できます。しかし、中学校・高校で教員の大きな負担となっている部活動指導については、外部指導員の導入にとどまらず、学校の教育活動の中に位置づける必要があるのかどうか、位置づけるならどのようなあり方が望ましいのかまで踏み込んだ議論をしないと、現状とほとんど変わらないままになるのが目に見えています。

自治体の判断で導入ができるようになった「変形時間労働制」については、大きな問題があります。
教員の業務量が仕分けされ、かなり軽減されるとともに、夏休みの労働時間も減らさない限り、かえって普段の労働時間が多くなり、負担軽減をめざす働き方改革とは逆行することになりかねません。
現状は、私が勤務していた高校の場合でも、1日の授業、HRが終わるのが15時30分過ぎ、それから定時の17時15分までは1時間45分程度。その時間で生徒への指導や校務分掌の仕事、会議、部活動の仕事などをすべてこなすことはできません。とくに運動部の顧問であれば18時、さらに20時まで面倒を見る場合が少なくなく、運動部の顧問であれば、土・日の練習や試合を含めれば週20時間以上の時間外労働をしていました。その労働時間を8月に振り替えたとしても、研修や校務分掌の仕事があり、運動部の顧問であれば、練習や合宿、試合があり、とても休める状況にはありません。

教員は「子どもため」の考えれば、いくらでも業務を増やしていきます。「先生がするのが当たり前」と考えられていたものを、一つひとつ見直していかないと、いつまでも状況は変わらない、という中教審の問題意識はわかります。ただ教員の業務量を減らすためには、関係者・機関との対話は欠かせません。
保護者や外部の協力をどこまで得られるかは、地域で事情が異なります。教育委員会が間に入って学校、PTA、住民をつなぎ、納得ずくで進めていく必要があります。

中教審答申素案では、何時間残業しても追加払いはしないという給特法の見直しは先送りしたことは,大きな問題です。教員のサービス残業が年間9000億円に及ぶと推計されていることをそのまま放置するのでは何のための答申か、ということになります。
対応を学校現場に任せ、現場の業務改善や工夫にとどまるような提案では、働き方改革の名に値しません。
教員の業務量に見合う教職員の増員を図らなければ残業はなくなりません。時間外労働や部活動手当など正当な労働に対しては賃金を支払うことは当然のことです。教員だから支払わなくてよいという理屈はありえません。当たり前のことをもっと毅然と政府に対して提案すべきです。

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