東京23区の大学の定員抑制に反対するシンポジウム

東京都が主催する「東京23区の大学の定員抑制に反対するシンポジウム」が2月9日、東京都議会議事堂都民ホールで開かれ、参加してきました。

画像


安倍政権は、2017年6月に「きち・ひと・しごと創生基本方針2017」で、東京23区において大学の定員増は認めないことを原則とすることを閣議決定しました。これをもとに18年2月6日には、東京23区の大学の定員増加を抑える法案を閣議決定しました。法案では、、東京への流出などで地方に若者が急激に減り、地域の活力が低下しているとし、地域の大学の振興と雇用の機会の創出を目的に掲げ、抑制は2028年3月までの10年間とし、留学生や社会人の受け入れ、専門職大学の新設(5年間の経過措置)など例外を設けたうえで、23区の大学定員を「増加させてはならない」としました(朝日新聞デジタル、2018年2月6日)。

これに対して小池百合子都知事は、日本の大学の国際的地位をさらに低下させることにつながりかねない、東京対地方の構図の中教育を考えるべきでない、学問の自由や教育を受ける権利の制約となりかねない、などと反対を表明(小池都知事「東京23区の大学の定員増の抑制に係る緊急声明」2018年2月2日)、反対のリーフレットを作成するとともに、シンポジウムを開催したものです。

画像


シンポジウムの登壇者は、次の通りでした。
コーディネーター 石山愛子(フリーアナウンサー)
パネリスト 小池百合子(東京都知事)、尾木直樹(法政大学特任教授)、パックン(タレント)、八代尚宏(昭和女子大学特命教授)

画像


まず都から「東京23区大学定員抑制に向けた国の動きの説明」があり、それを受けて各パネリストがそれぞれの立場から反対の見解を述べました。
次いで、(1)国の規制は大学の競争力の低下を招くのでは?、(2)「東京対地方」の構図は日本全体にとってマイナスになるのでは?、(3)学びたいという若者の夢をつぶしていいの?、の3つの論点に対して、パネリストが意見を述べるかたちで進められました。

この中で尾木さんは、世界大学ランキングで東京大学を始め日本の大学がランクを下げているが、大学の自主性に基づいた多様な発展性を阻害することは国際許走力の低下を招く危険があり、国内だけの視野の狭いパイを奪い合うような議論ではなく、「AI時代」を生き抜き「BI時代」を見据えたグローバルな視点で議論すべきこと、「東京対地方」という対立構図は国全体の研究・開発の停滞と地番沈下を招き、東京が抑制されると優秀な若者は海外の大学へ行く学生が増えること、若者の「学びたいところで学ぶ」という基本的な権利は保障されるべきで、地方でも国際教養大学などモデルとなるような魅力的な大学があり、若者が学びたいと思える環境の整備と予算投入が行われる必要があることを述べられました。
他にも、日本の大学は若者の大学になっているが、生涯学習の一環としての大学にしていく必要性を述べたことは、共感できるところがありました。

画像


八代さんは、保護主義では何も生み出せず規制撤廃、自由競争が大事だという立場に立ち、地方大学の経営悪化を防ぐための定員抑制は保護主義の論理であるとして反対し、大学の新増設を抑制しようとして失敗した「工場等制限法」の再来であること、地方にも世界に開かれた大学(国際教養大学、立命館アジア太平洋大学など)があり、新しいアイディアをうちだせるようにしないといけないと述べました。
ただ、新しいニーズに応える医学部や獣医学部等の新設には規制撤廃が必要と述べましたが、個人的には何でも規制緩和がよいとは思っていないので、違和感を覚えました。現実、加計学園について、本当に先進的な研究を推進する大学だと考えているのか、聞きたいところでした。

会場には全国専修学校各種学校総連合会の小林光俊会長の顔も見られましたが、専門職大学については話題になりませんでした。
専門学校関係では、東京都専修学校各種学校協会の山中祥弘会長が「東京23区の大学の定員増の抑制への意見」(2018年2月2日)を発表し、「大学等の東京特別区の定員規制は、高等教育としての実践的専門職業教育機関として国民の期待を受けて発足したばかりの専門職大学及び専門職短期大学を専門学校が東京特別区において新たに設置する道を閉ざすことになる」などとして反対の意見を述べています。

シンポジウムで感じたことは、東京対地方という構図ではなく、共生という観点から、東京でも地方でも、若者に魅力ある大学づくりを進め、そこに国が予算を投入していくこと、未来の若者のための人材育成に予算を使うべきで、防衛費を増額するなら教育費を増額することこそが求められているということでした。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック