安倍首相への公開質問状

安倍晋三首相がハワイの真珠湾訪問するのを前に、日米の歴史学者ら約50人が12月25日、首相宛てに歴史認識を問いただす公開質問状を発表しました。真珠湾だけでなく、中国や朝鮮半島、アジア諸国の戦争犠牲者の慰霊に行く予定があるかなどと質問しています。

質問状を出したのは、映画監督オリバー・ストーン氏や、国際法のリチャード・フォーク氏(プリンストン大学名誉教授)、歴史学の教授で核問題研究所長のピーター・カズニック氏(アメリカン大学教授)、日本近現代史の林博史氏(関東学院大学教授)、哲学者の高橋哲哉氏(東京大学教授)、放射線防護学者の安斎育郎氏(立命館大学名誉教授)ら53名。

質問状は、1941年12月8日に日本が攻撃した場所について、「真珠湾だけではありません」と指摘。安倍首相は真珠湾攻撃で死亡した約2400人のアメリカ人の慰霊のために訪問することを挙げ、「それなら、中国や、朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争被害者の『慰霊』にも行く予定はありますか」などと尋ねています。
また、安倍首相が2013年に国会で、「侵略の定義は定まっていない」と答弁したことにも言及。「連合国およびアジア太平洋諸国に対する戦争と、すでに続行していた対中戦争を侵略戦争とは認めないということでしょうか」と問いただしています。

日本は、1931年の「満州」事変以降、1945年の敗戦まで、足かけ15年にわたる戦争を続けました。日本が中国に対して仕掛けた侵略戦争でした。その主戦場は中国大陸でした。そして中国との戦争を続けるために必要な資源の確保のためにインドシナ半島やマレー半島、インドネシアなど東南アジアへの侵略を進めることになります。その過程でアメリカとの対立が深まり、アジア太平洋戦争となりました。
したがって安倍首相が、真珠湾攻撃で犠牲となったアメリカの将兵を慰霊するのであれば、何より先に慰霊の訪問しなければならないのは中国であり、朝鮮半島や他のアジア太平洋諸国にも慰霊すべきでしょう。日本の侵略戦争を認めず、南京大虐殺や「従軍慰安婦」の問題に対しても謝罪しない安倍首相にはそのような考えはないのだと思いますが。

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アリゾナ記念館


公開質問状の全文は次の通りです(Peace Philosophy Centre,http://peacephilosophy.blogspot.jp/2016/12/oliver-stone-and-52-scholars-and.html)。

「真珠湾訪問にあたっての安倍首相への公開質問状
2016年12月25日

親愛なる安倍首相、
安倍首相は先日、1941年12月8日(日本時間)に日本海軍が米国の海軍基地を攻撃した際の「犠牲者を慰霊する」目的で、12月末にハワイの真珠湾を訪問する計画を発表しました。

実際のところ、その日に日本が攻撃した場所は真珠湾だけではありませんでした。その約1時間前には日本陸軍はマレー半島の北東沿岸を攻撃、同日にはアジア太平洋地域の他の幾つかの英米の植民地や基地を攻撃しています。日本は、中国に対する侵略戦争を続行するために不可欠な石油や他の資源を東南アジアに求めてこれらの攻撃を開始したのです。

米日の開戦の場所をあなたが公式に訪問するのが初めてであることからも、私たちは以下の質問をしたく思います。

1) あなたは、1994年末に、日本の侵略戦争を反省する国会決議に対抗する目的で結成された「終戦五十周年議員連盟」の事務局長代理を務めていました。その結成趣意書には、日本の200万余の戦没者が「日本の自存自衛とアジアの平和」のために命を捧げたとあります。この連盟の1995年4月13日の運動方針では、終戦50周年を記念する国会決議に謝罪や不戦の誓いを入れることを拒否しています。1995年6月8日の声明では、与党の決議案が「侵略的行為」や「植民地支配」を認めていることから賛成できないと表明しています。安倍首相、あなたは今でもこの戦争についてこのような認識をお持ちですか。

2) 2013年4月23日の国会答弁では、首相として「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と答弁しています。ということは、あなたは、連合国およびアジア太平洋諸国に対する戦争と、すでに続行していた対中戦争を侵略戦争とは認めないということでしょうか。

3) あなたは、真珠湾攻撃で亡くなった約2400人の米国人の「慰霊」のために訪問するということです。それなら、中国や、朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争被害者の「慰霊」にも行く予定はありますか。

首相としてあなたは、憲法9条を再解釈あるいは改定して自衛隊に海外のどこでも戦争ができるようにすることを推進してきました。これがアジア太平洋戦争において日本に被害を受けた国々にどのような合図として映るのか、考えてみてください。」

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