労働教育研究会に行く

第20回労働教育研究会が6月5日、明治大学であり、参加してきました。

報告は、水畑順作さん(厚生労働省労働条件確保改善対策室長)の「厚生労働省の進める学生アルバイト対策と高校・大学における労働教育」。サブ報告は、小島周一さん(弁護士、日本労働弁護団幹事)の「ワークルール教育推進法制定をめぐる情勢と当面の課題」。

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水畑さんはまず、厚生労働省が実施した大学生・高校生に対するアルバイト調査の結果を紹介し、大学生では58.7%、高校生では60%が労働条件通知書等を交付されていなかったこと、大学生では48.2%、高校生では32.6%が労働条件等で何らかのトラブルがあったことを明らかにしました。その上で、アルバイト調査を受けて厚労省が今年度、学生アルバイトの労働条件の確保に向けた取り組みの状況を紹介しました。すなわち、(1) 事業主団体への文書要請、学生アルバイトが多い業界団体への文書要請や意見交換、(2)チラシ・冊子等の作成による周知・啓発、高校生に対する労働法教育の充実のための学習プログラムの作成、高校・大学等への労働法制の普及にかかる講師派遣やセミナーの実施、「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンの全国実施、(3)大学における出張相談、労働基準監督署・総合労働相談コーナー等における相談対応、などの取り組み状況を説明しました。

小島さんは、日本労働弁護団が「ワークルール教育推進法」の制定を求める意見書を提出し、推進法第1次試案を作成するまでの経緯、反響などを説明、とくに非正規議連が政策検討課題にワークルール教育推進法の制定を盛り込み、今年に入ってからは国会に法案提出を検討していることが報道されたことなどを報告しました。

質疑の中ではさまざまな問題が出されましたが、私が印象に残ったものをいくつか紹介すると、次のようなものがありました。
・厚労省が高校向けに労働法制に関する学習プログラムを作成中で、来年度に各高校に配布する予定との水畑さんの話に対して、高校側からは、教員対象の研修の機会が必要であること、新教科「公共」での取り組みに期待する旨の意見がありました。水畑さんも、同意見でした。
中教審教育課程部会の「たたき台案」によれば、教科「公共」は、キャリア教育の中核機能をになう教科として位置づけられており、「経済的主体となる私たち」の中に労働問題(労働関係法制を含む)もはいっています。国家・社会の形成者として「従順」な労働者ではなく、主体となる労働者の育成をめざすならば、労働教育に取り組むことが必要だと考えています。
・高校側からは、労働組合の位置づけはどうなっているかという質問がありました。小島さんは、現在の労働法制を正確に教えることが大事で、労働組合をどう使っていくのかはその上での話だ、と答えていましたが、労働組合をリアルに理解させるために、実際にユニオンの人にどのように団体交渉をしているのかなどの話をしてもらうなどの工夫は必要だと思っています。
・高校ではアルバイトについて禁止、許可制、届出制などさまざまですが、元高校教員から、許可制・届出制は許可した場合は高校側も責任を持つのだから、厚労省の「学生アルバイトのトラブルQ&A」をもとに説明し、何かトラブルがあった場合は相談に乗るなどの道筋をつくる必要があるという意見がありました。アルバイトは原則禁止だから、何もしないという学校が多い中で、進路多様校以下のアルバイトをしている生徒が多い学校では、ブラックバイトから生徒を守るためにも、きちんと取り組むことが求められており、重要な指摘だと思いました。
・大学側からは、上西充子さん(法政大学)が、厚労省が「アルバイトをする前に知っておきたい7つのポイント」などのチラシや冊子を作成して周知・啓発をしているが、大学にきちんと伝わっていない可能性があり、掲示や配布についてきめ細かな指示をする必要があること、また、労働条件通知書を書面でもらう必要を学生に理解させるためには、連合の調査で、書面を渡された場合とそうでない場合では、トラブルに遭遇する可能性に違いがあることがわかっており(上西充子「労働条件の書面を渡されないまま入社した場合に待ち受けている現実(連合の調査より)」YAHOO JAPAN ニュース、http://bylines.news.yahoo.co.jp/uenishimitsuko/20160604-00058450/)、そうした現実と合わせて周知・啓発してもらうと説得力が違うのではないか、という意見が述べられましたが、同感です。
・ある大学の教員からは、大学のキャリア教育について、キャリアセンターはもブラック企業・ブラックバイトのことよりは、どこに就職させるかということに関心があり、教員はトラブルがあったときにどのように対応していいか分からないのが現状だと語っていました。このような大学は少なくないのが現状だと考えられますが、ブラックバイトや就活から学生を守るためにも、労働法教育に取り組むことが急務になっていると思っています。

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