高校新科目「公共」と教員の自立

文部科学省は8月5日、2020年度から順に実施される新学習指導要領について、22年度をめどに高校に必修の「公共」「歴史総合」「総合地理」(いずれも仮称)などの新教科を設ける骨格案を中央教育審議会に示し、公表しました。

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『朝日新聞』2015年8月6日付朝刊

『朝日新聞』2015年8月6日付朝刊によれば、「公民科の「公共」は選挙年齢が18歳以上に引き下げられたことを受け、選挙など政治参加について学習する。将来、成年年齢が引き下げられるという意見も踏まえ、社会保障や契約、家族制度、雇用、消費行動といった社会で必要なことを学ぶ」科目となっています。

この新科目「公共」は、自民党が2010年のマニフェスト「自民党政策集J-ファイル2010」にも、「国旗・国歌を尊重し、我が国の将来を担う主権者を育成する教育を推進します。過激な性教育やジェンダフリー教育、自虐史観偏向教育等は行わせません。道徳教育や市民教育、消費者教育等の推進を図るため、新教科「公共」を設置します。ボランティア活動やインターンシップを必修化し、公共心や社会性を涵養します」と、提言されており、13年6月、自民党のプロジェクトチームは、「社会でつまづき、責任ある行動がとれない若者が多い」として、規範意識や社会のマナーを学ばせる必要性を指摘し、「(現行科目は)客観的な知識は断片的に教えているが、パッケージ化した全体像は示されていない」として科目の新設を求める提言を発表、14年の衆議院総選挙の公約でも新教科「公共」の設置がもられていました。
したがって、今回の新教科「公共」の新設は、自民党の提言に添ったものと言えます。

具体的な内容としてどのようなものが盛り込まれるのかは、今後、中教審で検討されることになりますが、国家に従順な国民の育成をねらいとしていることに注意を払う必要があります。そして、たとえ自民党の提言に沿った内容が盛り込まれたとしても、ちょうど「現代社会」が新設されたときと同じように、授業内容を作りかえていく必要があります。

文科省のサイトにアップされている、「教育課程企画特別部会 論点整理のイメージ(たたき台)(案)」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/08/06/1360750_1.pdf)には、「公民科は、様々な課題を捉え考察する基となる概念・理論や先哲の多様な思想を学び、自ら考え選択・判断する力を鍛える教科としての意義を持つ。そうした公民科における共通必履修科目として、家庭科や情報科をはじめとする関係教科・科目等とも連携しながら、主体的な社会参画に必要な力を、人間としての在り方生き方の考察と関わらせながら実践的に育む科目「公共(仮称)」の設置を検討することが求められる。なお、「公共(仮称)」については、社会的・職業的な自立に向けて必要な力を育むキャリア教育の中核となる時間として位置付けることを検討する。この際、学校教育活動全体の中でのインターンシップの在り方や位置付け等についても、併せて検討することが求められる。」とあります。
ここからは、新教科「公共」は、「キャリア教育の中核」として位置づけられていることが知られます。

そうだとすれば、「政治参加」「雇用」という文言に着目し、主権者教育とともに、濱口桂一郎さんも提言(hamachanブログ「高校新科目「公共」は労働法教育の場となり得るか」http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-6a3b.html)されているように、「労働法教育を中心とした権利としてのキャリア教育という観点をきちんと入れ込んでいくこと」が重要になってきます。
主権者教育にしても、憲法や政治制度、選挙制度を知識として教えるだけでなく、現実の政治・社会問題、論争的な問題を取り上げて生徒に考えさせたり、ディベートや模擬投票など、実践的な取り組みを進めていく必要があります。
労働法教育にしても、知識として労働三法を教えるだけでなく、たとえば労働者としての権利をどこをどのように動かせば実現できるのか、労働組合とはどんな役割を果たしているのか、外部から講師を招いて考えさせることを含め、実践的な労働教育を進めていくことが求められます。

社会と結びついた授業を通じて生徒たちに、これからの生き方や働き方を前向きに考えさせることが重要になってきますが、そのためには何よりも、教員自身が主権者、労働者として自立しているかどうかが問われていると思っています。

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