『21世紀のグローバル・ファシズム』出版記念シンポジウム

グローバル・ファシズム研究会主催の『21世紀のグローバル・ファシズム-侵略戦争と暗黒社会を許さないために-』出版記念シンポジウムが1月19日の午後、港区立勤労福祉会館で開かれ、参加してきました。

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木村朗・前田朗編『21世紀のグローバル・ファシズム-侵略戦争と暗黒社会を許さないために-』(耕文社、2013年)は、世界的な規模で戦争国家、警察国家、開始社会、格差社会への道が進行し、日本でも戦後民主主義、平和主義が急速に崩壊し、権力(国家)と資本(企業)が暴走しはじめ、再び1930年代と酷似した「戦争とファシズムの時代」の到来が危惧される危機の時代を迎えているという認識のもとに、23名の執筆者が、「戦後日本の歩みとはいったい何だったのか、今日の危機的状況をもたらすにいたった原因はどこにあるのかという問題意識を根底に置いて、私たちはどのような時代に生きているのかを改めて問い返すとともに、またいま私たちは何をなすべきなのかという危機克服に向けた方策・課題を模索」(まえがき)ものです。

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シンポジウムでは、編者の前田朗さん(東京造形大学)の趣旨説明のあと、野村晋作さん(ピースボート共同代表)、清水雅彦さん(日本体育大学)、上原公子さん(元国立市長)、西野留美子さん(「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(パウラック)共同代表)、李昤京(リ・リョンギョン)さん(立教大学非常勤講師)、川内博史さん(前衆議院議員)、木村朗さん(鹿児島大学)が、それぞれ発言されました。

その中で清水さんは「憲法の平和的生存権」について執筆したことに関連して、(1)憲法の平和主義では第9条が注目されるが、前文の平和的生存権の文言に注目し、この部分の平和主義もきちんと議論する必要があること、(2)平和学の議論では第9条は物理的暴力(戦争)のない状態を目指す消極的平和主義の立場、憲法前文は構造的暴力のない状態を目指す積極的平和主義の立場であること、(3)安倍首相は軍事力で何かをすることを「積極的平和主義」と言っているが、平和学の議論とはまったく違うこと、(4)国連人権理事会では「平和への権利宣言」の議論が行われているが、これは憲法前文の精神と共通していること、しかし、日本政府は、理事国であった時に、「平和への権利促進決議」にアメリカととも反対したこと、(5)自民党改憲案は前文の平和的生存権を削除し、第9条を変えて自衛権行使、国防軍設置を掲げているが、外務省はこの自民党改憲案を先取りした行動をとっていること、などを指摘しました。
マスメディアは、安倍首相の「積極的平和主義」を何の注意書きもなく垂れ流していますが、その平和主義の意味が真逆であることをしっかり捉える必要があります。

上原さんは、ファシズムは静かにおりてくるとし、その一例として、有事法制をつくった礒崎陽輔は、国民の意識をどう変え、文句を言う人を黙らせるような組織を作ることに努力したこと、「国民保護法」などの有事法制について、戦争をイメージしたものは作れないので、自治体に自主防災組織やボランティアによる自発的な活動に対して必要な支援を行うようにし、防災訓練で自衛隊に協力できるようなものにしたり、「安心安全」をキーワードに、千代田区の生活環境条例(タバコポイ捨て禁止)をはじめとして各自治体に「安全安心まちづくり条例」制定キャンペーンが行われ、市民同士の監視体制、風土を育成したり、地域の見回りなどの防犯システムが作られていること、「国民保護法」というと戦争になった時に国民を守ってくれる法律のように考えがちだが、実際は戦争のために国民を組織するための法律であること、自民党改憲案には「緊急事態条項」が入り、権力者の判断で国民に軍隊が銃を向けることを可能にしていること段階に来ていることに、もっと注意していく必要があることを発言されました。

西野さんは、国民統制の手段として使われるのは教育、マスコミであるが、いま情報操作が急ピッチで進められているとしたうえで、安倍政権による歴史認識、「慰安婦」の問題を取り上げました。自民党や安倍政権による「慰安婦」強制否定論は、日本国と日本国民の名誉と尊厳の問題として捉えられており、「慰安婦」を教えることは日本人としての誇りと自信を失わせ、「日本民族」の尊厳を傷つけるものと考えていること、「慰安婦」制度の重大な犯罪性を認識しているからこそ、強制の責任を業者に押しつけたり、「慰安婦」は公娼でお金ほしさに自らの意志で「慰安婦」になったのだ、と責任転嫁を図り、国家の責任を巧妙に回避しようとしたものであること、そして「慰安婦」の強制性を否定する側は、吉見義明さん(中央大学)が発見した「軍慰安所従業婦等募集に関する件通牒」(1938年)について、軍は関与したがそれは業者の強制を辞めさせるためのいい関与であった史料として使っているが、この通牒は軍が取り締まった証拠というよりも、「慰安婦」徴集において軍が統制していた証拠であり、「慰安婦」にするために未成年の女性や、詐欺・甘言・権力濫用を含めて集めた青年女性をアジア各地の慰安所に移送したことは、当時の刑法や国際醜業条約に違反した行為であることを指摘し、戦争は沈黙とともにやってくることを繰り返させてはならないことを発言されました。

特定秘密保護法の制定、国家安全保障基本法制定の動き、集団的自衛権容認の解釈改憲の動きなど、「戦争のできる国家」への動きが急ピッチで進められている今日、「戦争前夜」の時代状況を正しく認識し、どのように立ち向かうべきなのかを考える上で、『21世紀のグローバル・ファシズム』が出版された意義は大きなものがあります。
シンポジウムへの参加者が発言者を除くと10数名と少なかったのは寂しい限りでした。私たち1人ひとりがこの危機的な時代状況に向き合う必要があると思っています。

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