『「学び」という希望』を読む

尾木直樹さんの『「学び」という希望』(岩波ブックレット、2012年)を読みました。

画像


「震災は子どもたちにどんな影響を与えたのか、震災によって浮き彫りになった日本の教育の問題点・課題とは何か、そして、いまの教育をどのような方向に導いていくべきなのか」。そうした課題意識から書かれたものです。

震災後、岩手・福島・宮城の被災地を訪れたときの子どもたちの様子を報告するところから書き始め、東京で開かれた養護教諭が集まる集会や、宮城での講演会の際にとったアンケート調査などをもとに、現状を明らかにしています。養護教諭からのアンケートをもとに、「保健室から見た子ども、学校の様子」を紹介し、震災後、子どもたちの様子に変化を感じていると回答した割合は、全国平均で42.5%、東北では80%になり、以前よりも「イライラしている」子ども、保護者、教師が増えていること、また、講演会参加者のアンケートからも、子どもたちの心が荒れてきていることや震災のトラウマの存在を感じとることができると指摘しています。

尾木さんは、今回の震災は、日本の教育の根本的な問題点を浮き彫りにしたとし、子どもたちがどう生きるか、というテーマに教育がまったく向き合えていないという深刻な問題があると言います。子どもたちが震災の影響で不安な状況下におかれてイライラしている。疲弊している。なのに、学校現場では、震災以前と何も変わらずに、授業のコマ数をこなすことが最優先され、その授業の中身も、テストや受験のための知識を詰め込む内容がほとんどだ、と指摘します。そして、子どもたちが、将来、この社会をどう生きていくのか、人々と困難を共有していかに克服し、生き抜くのか、その力をどう身に付けさせるのか、というダイナミックな「生きる力」の養成という視点が欠落していると批判しています。

尾木さんは、「生きること」や「社会をどう切り拓くか」といったことから、日本の教育があまりにも乖離し、依然として暗記などのトレーニング主義(受験学力)に陥っていること、その背景には競争原理が浸透していることを分析したうえで、生涯にわたって学び続けるためには、「学ぶことを楽しむ」ことが必要だと指摘します。「問題を発見し、深く考えて、解決方法を導き出す。新しい知識や技術を身につけて、自らを成長・発達させる。そうしたことを楽しいと感じる気持ちがなければ、学び続ける感性は育ちません」と。
震災後の日本社会では、新たな難題が次々と降りかかってきます。そのとき、自ら主体的に問題を発見し、あたらして方法で解決するためには、固定された知識を詰め込むのではなく、柔軟に対応できる感性、すなわち学び続ける姿勢こそが重要だ、と尾木さんは指摘します。

貧困な日本の教育投資の現実、教師が厳しく管理・統制され、「集団」を優先し、「個」に寄り添うことが出来にくくなっている現状を打開し、子どもたちが安心して、豊かに学ぶこと、「生きる力」を見つけていくことが、社会にとって何よりも必要になっています。
尾木さんは、「震災を経て、私たち大人は、子どもにどんな希望を残すことができるか」と、問うています。
震災後の日本の教育はどうあるべきか、示唆に富む提言がなされており、私もいま一度、考えていきたいと思っています。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック