スポーツデザインシンポジウム-日本の部活の将来を考える

全国で子ども向けのスポーツ教室を展開し、また、学校の部活動の外部指導員を派遣しているリーフラス(株)の主催によるスポーツデザインシンポジウム「日本の部活の将来を考える」が5月27日、東京・杉並公会堂で開かれ、参加してきました。

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シンポジウムは、研究者、教育委員会、外部指導員それぞれの立場からの講演と、パネルディスカッションの2部構成で行われました。
プログラムは、次の通りでした。
講演① 内田 良氏(名古屋大学准教授)「制度設計なき部活動の未来を考える」
講演② 小林 淳氏(杉並区教育委員会)「部活動活性化事業」
講演③ 清水 恭孝氏(國學院久我山高校サッカー部監督)「國學院久我山高校サッカー部における外部指導員としての取り組み」
パネルディスカッション
 コーディネーター 宮本 大輔氏(リーフラス常務執行役員)
 パネリスト 岩政 大樹氏(元サッカー日本代表)、内田氏、小林氏、清水氏

内田さんの講演は、部活動問題が2016年頃から社会問題化しマスメディアでも取りあげられるようになったが、職員室では無風状態となっていること、部活の加重負担や顧問の強制を問題にする教員は「一部」にすぎないとフタをしたり、「子どものため」を考えていないとするパッシングも根強いこと、部活動はグレーゾーン(教育課程にはないが学校の教育活動の一環となっている)でルールがないため、土日の部活で教員がバスを運転し、事故を起こせば責任を取らされ、学校はオリンピックの養成所ではないのに校舎に垂れ幕を下げてみんなで過熱していく状況があるとし、部活動の将来を考えたとき、トップアスリート養成は民間に移し、部活動は週3日程度とし、サスナブルにしていくことを提案したものでした。
講演の内容自体は『ブラック部活動』の本でも触れられている内容でしたが、制度設計がないまま部活動が過熱し、教員も生徒も加重負担になっている現状をどう打開していくのか、改めて問題点をうきぼりにした講演でした。

小林さんの講演は、杉並区立和田中学校で民間校長の藤原和博校長時代に部活イノベーションが行われたのを機に民間企業の指導員の導入が行われ、現在は教員の負担軽減のために、顧問教員をA・B・Cの3タイプに区分し、指導経験のないCタイプの教員に対して民間から専門コーチを導入していることを紹介したものでした。

清水さんの講演は、2015年から國學院久我山高校サッカー部の監督として招かれ、火曜から土曜は練習、日曜は試合、月曜は休み、練習時間は原則16時~18時、週3日は野球部とグランドを半面だけ使用という制限された条件の下で活動していること、(1)指導者としてのスタンスとしては、指導者としてサッカーを学び続ける、選手を本気にさせられるか、チームばかりに目を向けず、選手一人一人を見ること、(2)外部指導員としてのスタンスとしては、学校(部)の文化や歴史を理解する、学校が何を求めているかを汲み取ることを心がけていること、選手には"自立"と"感性"を求めていることなどを語ったものでした。
練習時間をいかに無駄にしないかを考え、インターハイで準優勝をした経験から、練習時間の長さではなく、練習の質が大事であることを語っていたことが印象に残りました。

パネルディスカッションでは、研究者、教育委員会、外部指導員、元トップアスリートというそれぞれの立場から、部活動のあり方について意見交換が行われました。
元Jリーガーで日本代表であった岩政さんが、今年から文化学園大学杉並中高のサッカー部の外部コーチに就任したところ、全国大会をめざすのですか、と世間からは見られ、戸惑ったことを語られ、部活動が社会ではどのように受けとめられているのかが分かり、部活動改革は簡単ではないことがうかがい知ることができました。
フロアからは、「部活動は何のためにあるのか」と問われ、それぞれの方から意見が述べられましたが、その中で内田さんは、趣味の保障の機会だとし、すぐれた子どもたち(トップアスリート)は民間か私立高校へ、趣味を楽しめるものを機会保障するのが部活動の役割ではないか、と持論を述べられました。

さまざまな立場の人が意見交換しながら、部活動の将来を考えることは大事なことです。ただ部活動の改革を進めていくことは一筋縄ではいかないことを改めて感じたシンポジウムでした。


学校現場では、「部活動の指導ができなければ教師とはいえない」、夜遅くまで、そして土日も練習・試合、そうしてこそ「生徒思いの熱心な先生」と評価されます。そして反対に、部活顧問は持ちたくない、土日のどちらかは休みにしたいと言い出そうものならば、「わがままだ」「子どものためにどうして指導しないのだ」と非難されます。
スポーツ庁も文化庁も2018年、部活動のあり方についてのガイドラインを発表し、休養日の設定や平日、休日の活動時間の規制を求めていますが、ガイドラインを順守しようという学校はそう多くはありません。とくに部活動の実績で学校の名を売ろうとしている私立高校の多くでは最初から無視しているのではないかと感じています。

部活動は、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」ものとされ、豊かな人間性や社会性の育成、充実した学校生活の展開、生涯スポーツ・文化活動に親しむための得意なスポーツ・文化活動の基礎づくりなどの意義を持っています。しかしその一方で、教員側からは長時間・土日の部活動による加重負担、部活顧問の強制、生徒側からは、長時間・土日の部活動、部活の強制加入、教員による体罰やハラスメントなど、さまざまな問題が社会問題化しており、その改革が求められています。
まずは教員が、部活動にいまどんな問題があるのか、「一部の教師の問題」として片付けるのではなく、その声に耳を傾けること、そのうえで各学校で、部活動に関わることを希望する教員、生徒、保護者が意見交換できる場を設定し、生徒・教員が楽しく活動を展開できるような方途を模索すべきだと考えています。

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