教員の働き方改革 中教審中間報告

教員の働き方改革を議論している中央教育審議会の特別部会は12月12日、長時間労働を解消するため、勤務時間に上限を設けるなどを盛り込んだ中間報告をまとめました。
文部科学省では、民間企業などに適用される労働基準法の時間外労働の上限、1か月45時間を参考に、教員の勤務時間の数値目標を来年度にも示す方針です。(『読売新聞』2017年12月13日朝刊)

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『読売新聞』2017年12月13日朝刊

中間報告では、登下校の見守りは地域や保護者が担うなど計14の学校業務について役割分担を示しています。
教員の長時間労働の大きな要因を占める部活動については、「各学校が部活動を設置・運営することは法令上の義務とはされていないが、現状では、ほとんどの中学校及び高等学校において部活動が設置され、教師が顧問を担わざるを得ない状況である」と認識したうえで、部活動指導員をはじめとする外部人材の参画、適切な活動時間や休養日の基準の設定などに取り組み、将来的には地域で部活動に代わり得る質の高い活動の機会を確保できる十分な体制を整える取り組みを進め、部活動を学校単位の活動から地域単位の取り組みにし、学校以外が担うことも積極的に進めるべきである、としています。
公立学校の教員の給与を定める給特法に関しては、時間外勤務手当を支払わない代わりに基本給の4%を「教職調整額」として支給する規定が、勤務時間の管理をあいまいにさせ、長時間労働の一因になっていると指摘されてきましたが、中間報告では給特法の見直し案は示されず、今後の議論に委ねられました。

中間報告では、教員の負担軽減の観点から、学校や教員が行っている業務について、「基本的には学校以外(自治体、教育委員会、保護者、地域住民)が担うべき業務」「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」に分類したことは評価できます。

教員の勤務時間についても、時間外勤務の抑制に向けて、勤務時間に関する数値目標を設定する必要があるとし、文科省が、勤務時間に関する数値で示した上限の目安を含むガイドラインを早急に検討し、それに実効性を持たせるための方策も併せて示すべきであるとした点も、一定の評価はできます。
ただ教員が長時間過密労働をせざるを得ない背景には教員の定数改善を行い、少人数学級を小学校から高校まで実現し、教員の増加を図ること、教員の持ち時間数に上限を設け、こどもたちの教育に必要不可欠な授業準備や研修時間の確保を図る必要があります。そのことが実現しない限り、上限規制の数値目標が設定されたとしても、長時間過密労働は改善されないと考えています。

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部活動については、「法令上の義務とはされていない」としながらも、実際には「教師が顧問を担わざるを得ない」とされ、依然としてグレーな位置づけになっています。
「部活は教員の本来業務でないと明記してほしかった」とする高校教員・斉藤ひでみ氏(仮名)は、これでは顧問の押しつけは改善されないと批判しています(THE PAGE「「部活は本来業務ではないと明記してほしかった」教員が国の議論に落胆」https://thepage.jp/detail/20171215-00000001-wordleaf)。部活動は教育課程外であるにも関わらず、学習指導要領に「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるように留意すること」とあるため、多くの学校では教員は部活動顧問を強制されてきました。「教師が顧問を担わざるを得ない」とあれば、これを拠り所に顧問をやらざるを得ない現状は変わらないことになり、斉藤氏の危惧はわからなくありません。
これに対して中教審特別部会員の姉尾昌俊氏は、中間報告の文言により、部活動は必須の業務ではないということが明確になったとし、「学校の業務」を必須かどうかを問わず「学校の責任下で行う仕事」と定義するならば、学校が部活動を学校教育の一環として行うと決めた場合は、明白に学校の業務となる、としています。もしと部活動を学校の業務外としてしまうと、(1)生徒の事故やケガが起きたとき、学校の責任外となる、(2)教員が過労死したり病気になったりしたとき、公務災害(私立の場合は労災)とみなされないこととなる、(3)土日の部活動には、一定時間以上は部活動手当が付く地域がほとんどであるが、業務外となると、手当を支給する根拠があやしくなる、などをあげて、不都合も多い、としています(姉尾昌俊「部活は学校の業務なのか??」姉尾昌俊ブログ、http://senoom.hateblo.jp/entry/2017/12/15/213106)。
この姉尾氏の指摘は、部活動は教員の本来業務ではない、と主張するだけでは片付かない問題があることを示しています。

部活動が、学校の業務として、つまり教員の趣味の活動ではなく、職務として部活動指導をしているにも関わらず、給特法で超勤4項目には該当しないため、17時以降の部活動指導は教員の自発的な活動とされるように、現在の部活動の制度は矛盾だらけの状況になっています。中間報告は、将来的には部活動を地域単位の取り組みにし、学校以外が担うことを進めることを提言していますが、これでは、現在部活動指導に苦しんでいる教員を救う手立て、方策にはなっていません。具体的な工程表を提示すべきです。
とくに運動部や文化部でも吹奏楽部などに見られる勝利至上主義を改めるための有効な施策を打ち出すこと、スポーツ推薦制度の見直しを図ること、子どもたちの生活にゆとりを生み出し、成長・発達にとって不可欠な休養日を確保すること、週当たりの部活動時間の上限規制をすること、全国大会のあり方を見直すことなど、具体的な検討を進める必要があります。

給特法の改正については、超勤4項目を堅持し、部活動指導を追加するようなことがあれば、本末転倒、論外で、教員の長時間労働に一層拍車がかかることになります。
給特法については、全日本教職員組合が「教職員の長時間過密労働の抜本的な解決を求める全教の提言」(http://www.zenkyo.biz/modules/opinion/detail.php?id=481)に沿って、検討すべきです。提言には次のようなことが提起されています。
・教員の勤務時間管理は服務監督権者(校長)の責任であることを明文化し、校長による適正な勤務時間管理を制度化すること。
・超勤4項目を含め週当たりの実労働時間の上限を規定すること、実労働時間が法定労働時間を超えた場合は、労働基準法第37条に準じて計算した時間外勤務手当を支給する規定を設けること。
・教職調整額についいは、現実に勤務した時間に対する事後的な精算という性格の賃金の一部支給とみて、これを超える時間外労働があった場合には精算すること。

いずれにしても文科省は、中教審の議論だけに任せず、広く国民の意見を求めるとともに、日教組や全教など教職員組合とも協議・意見交換の場を設ける必要があります。

教員が、より充実した教育が行えるようにするためには、子どもと向き合える時間を確保し、授業の準備や研修への参加などができるようにするなど、教員にはゆとりが必要です。長時間過密労働を解決する「教員の働き方改革」が求められています。


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