職業教育特化の新大学創設へ

文部科学省は3月18日、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」が3月4日に配付した資料「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の在り方について(審議まとめ素案)」を公表しました。
それを受けて朝日新聞は、「職業教育特化の新大学」と題する記事を掲載、有識者会議が18日に案をまとめ、調理師やプログラマーといった「専門技術を持つ人材の育成」を強化するため、「職業教育にしぼった新しい大学が創設される」と報じました(『朝日新聞』2015年3月19日付朝刊)。

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『朝日新聞』2015年3月19日付朝刊

審議まとめ素案によれば、新大学は、①教育内容・方法は、各職業分野に従事するために必要な専門教育を中心に、その基盤となる教養教育を行い、実習・実技やインターンシップ、コミュニケーションスキルやPBLを重視する、②教員は、その一部に各職業分野で卓越した実績のある実務経験者をあてる、③修業年限は2~4年制で、2~3年制の場合は「短期大学士」、4年制なら「学士」に相当する学位または職業学位を与える、④新大学の質を保証するため、設置基準を設定し、国が認可する、⑤開学後は自己点検・評価と第三者評価を実施する、⑥名称は「専門職業大学」「専門職大学」などが考えられる、⑦公的助成は今後の検討が必要である、などとなっています。

記事では、「専門技術を持った人材を育て、地域活性化の中核を担ってほしいという期待が、地方を中心に高まっている」とし、こうした事情を背景に、「有識者会議は高等教育機関の新設が必要としてきした」としています。

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東京・吉祥寺にある二葉ファッションアカデミー

これまで実践的な職業教育は専門学校が中心になって担ってきました。しかし、専門学校の教育は「玉石混淆」と言われるように学校間の格差が大きく、長い間、その教育の質の担保に問題があるとされてきました。そこで昨年4月からは、高等教育における職業教育を充実させるための方策の1つとして、「職業実践専門課程」がスタートしました。これは、職業実践的な教育のための「新たな枠組み」づくりに向けた専修学校専門課程における先導的試行として、企業等との密接な連携により、最新の実務知識等を身につけられるような教育課程を編成し、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専門課程を文部科学大臣が「職業実践専門課程」として認定し、奨励するもので、平成25年度・26年度で合計、673校2042学科が認定されています。専門学校のおよそ25%が認定を受けていることになります。
この「職業実践専門課程」については、職業教育の水準向上を目的に導入され、その認定要件は専門課程の設置基準よりもハードルが高くなっており、特に学校関係者評価と情報公開の義務化により、高校の立場からは生徒を安心して送れる学校群になることが期待されています。また「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」の創設への第一歩となり、アカデミックな教育を上に、職業教育を下にみる世の中の一般的な評価を変え、職業教育を高等教育の中に正当に位置づけていくことになることが期待されています。
ただ現状では、「職業実践専門課程」に認定された学校の中には、書類さえ整っていれば各都道府県(東京都の場合は各区・市)が文部科学大臣に推薦している実態があるため、認定要件である情報公開さえきちんと実施していない学校があり、残念ながら、早くも高校側の期待を裏切っている学校があります。

有識者会議がまとめた「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」、いわゆる職業教育型大学の創設は、記事によれば、開学まで4年以上はかかるとみられているとしていますが、「職業実践専門課程」がスタートしてまだ2年目であり、その実績を見たうえで進めていくべきだと考えています。
なぜなら、教育の質保証が担保されて高等教育機関としてふさわしい職業教育が行われているのか、その検証はまだこれからであり、卒業生が社会でどのように活躍しているのか、その検証もこれからです。また、各分野における第三者評価の体制も構築できていません。ようやく今年度から第三者評価のモデル事業が始まったばかりだからです。

さらに、問題点の1つとして、「職業実践専門課程」の位置づけをどのように考えていくのかが挙げられます。
「職業実践専門課程」がスタートしたときには、この「職業実践専門課程」の教育の質保証を図り水準を向上させ、そのうえで1条校化と職業教育型大学にしていくのではないかと考えていました。ところが、今回の有識者会議の審議まとめ素案を読むかぎり、「職業実践専門課程」のことは触れられておらず、「職業実践専門課程」とは関係なく、職業教育型大学を創設していくという考え方になっています。そうだとすると、実践的な職業教育を行う教育機関は、、専修学校専門課程(専門学校)、「職業実践専門課程」、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」(職業教育型大学)の3つが併存することになります。
これでは、ただでさえ、専修学校制度が複雑でわかりにくいといわれているにもかかわらず、今度は3つの教育機関が併存することになれば、高校側から見ても、混乱を招きかねない事態になります。
有識者会議のあと具体的な制度設計を審議する中央教育審議会では、「職業実践専門課程」をどのように位置づけるのか、整理をする必要があると思っています。



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