新たな高校教育政策フォーラム
3月11日、日本高等学校教職員組合(日高教)主催による「新たな高校教育政策フォーラム」が明治大学で開かれ、参加してきました。
このフォーラムは、日高教が、高校授業料無料化の第一歩を踏み出した新たな情勢のもとで、教育の無償化の実現と「無償教育」の理念にふさわしい、新たな教育政策の提言をめざして、2年間にわたる検討委員会の議論にもとづきまとめられた第1次提言「高校教育の再生の道はどこにあるか」(2011年5月)、第2次提言「若者の成長を社会全体で支えるために」(2012年3月)の概要説明と、それをもとに意見交換を行ったものです。
第1部〈日高教提言の発表〉では、5人の検討委員からそれぞれ執筆部分について説明がありました。
①高校の「入口」問題、義務教育と高校教育の接続について…与田徹さん(大阪府立大手前高校定時制)
②高校教育の改革の課題(教育課程、特別支援教育)…島貫学さん(京都府立朱雀高校)
③高校教育の改革の課題(職業・労働教育)…田村儀則さん(青森県立八戸水産高校)
④地域に根ざした学校づくりの課題…宮下与兵衛さん(長野県立赤穂高校定時制)
⑤高校教育と高等教育、社会との接続の問題…伊藤稔さん(埼玉県立伊奈学園総合高校)
すべての発表を紹介することは出来ませんが、私が高校教員のときに取り組んだこととも関連する③④について触れておきたいと思います。
田村さんの発表は、「新しい職業・教育論」と題し、すべての高校生に職業と労働の教育をおこなうために「職業科」を教科として導入することを提言したものでした。東日本大震災による生活や労働の困難、若者の非正規労働化やサービス残業の横行、労働環境の悪化の広がりなど、生活や労働の困難という潮流の中で若者たちは生きているとし、すべての人が安心して働くことができ、人間として生きていくことを支えてくれる社会をつくるために、社会を担う力を育てる職業・労働教育を、児美川孝一郎さん・本田由紀さん・竹内常一さんらに学び、改革や実践を進めていく必要があることを提起されました。
田村さんは、中教審キャリア教育・職業教育特別部会答申(2011年1月)が労働法制の改悪、働く労働者の権利については見向きもしていないと批判されました。問題はそれに対抗しうるキャリア教育の実践を、特に普通科高校でどこまで取り組んでいるのか、実践例を集め、到達点を明らかにし、より豊かな職業・労働教育のプログラムを作っていく必要があります。私も総合学習「人間・生きる」によるキャリア教育の実践を『高校のひろば』に紹介させていただいたことがありますが、東京の和光高校や神奈川の田奈高校などの実践を分析するとともに、児美川さんらのキャリア教育論を参考に、「職業科」を具体的にどのように編成するのかを検討していく必要があると思っています。
宮下さんの発表は、「高校つぶしから「地域の高校」を育てる流れをつくろう」と題し、地域住民とともに学校のあり方を考え、統廃合を阻止した長野県での取り組みを紹介したうえで、「地域の高校」を地域に開き、父母・生徒・地域住民が参加し共同する学校づくりを進めていくことを提言されました。
宮下さんは自身が関わった辰野高校の三者協議会などにも触れて、生徒の学校参加により、生徒たちは主人公意識・主権者意識を向上させていくこと、さらに、生徒たちは地域の課題について学び、調べ、発表し、さらに課題解決のために地域住民と話し合い、まちづくりに参加して住民と協働していくことで、シティズンシップ(市民意識)を向上させていることを紹介し、学校づくりと地域づくりを結びつける実践を進めていくことの重要性を提起されました。
宮下さんの辰野高校での三者協議会の取り組みに始まる「開かれた、参加と共同の学校づくり」は、全国各地に広がっています。私も学校で三者協議会を提起し、足かけ5年間にわたり取り組んできました。最初は生徒の施設改善の要望から始まりましたが、4年目・5年目にはよりよい授業をつくっていくために生徒・教員から授業改善に向けて意見交換が行われるまでになりました。そのなかでリーダーとなった生徒たちは大きく成長していきました。
東京や大阪で進められている校長権限を強化し職員会議を形骸化するような学校運営では、教職員は元気にならず、学校評価制度・教職員評価制度のもとで教職員同士が同僚性を失い、職場は多忙化し、自主的な研修も激減するという問題を生み出していくことになります。その意味では、困難な状況の中で、新しい学校づくり、すなわち「開かれた、参加と共同の学校づくり」をどのように進めていくのかはとても大事だと思っています。
第2部〈日高教提言についての意見交換会〉では、浦野東洋一さん(帝京大学)がコーディネーターになり、中田康彦さん(一橋大学)、高橋亜美さん(児童養護施設等退所者のアフターケア相談所「ゆずりは」所長)、岩井佑樹さん(法政高校生)がそれぞれの立場から意見が述べられたあと、フロアの参加者から提言に対する意見が述べられました。
フロアからの意見では高校での特別支援教育に関連する質問や意見が多く出されました。
中田さんは、提言に対する意見発表として3点について述べられました。
(1)仕事・社会との接続の問題。教科として「職業科」を独立させ、普通科における職業・労働教育を導入するという提言であるが、総合学科がそのモデルケースではないかと思っていたが、普通科で出来るのか。
(2)適格者主義について。高校の入口の問題として適格者主義から希望者全員入学にするという提言だが、スローガンから一歩踏み出した取り組みだと思うが、最低限の基本学力(読み書き算)がない生徒を受け入れるが「補修教育」を行うとなると別立てで行うのか、条件整備はどうか、実践の場でどうなるのか、検討が必要。
(3)高校・大学の接続の問題。大学でもリメディアル教育が行われるようになっているが、高校段階と高等教育段階でどのようにつながれば良いのか。
高校教育をめぐる諸問題は多岐にわたります。日高教中央執行委員長の加門憲文さんが、開会の挨拶の中で、各学校・地域で学習・討論を広げ、学校づくり、教育を繰りひろげること、地域での教育論議を政策提起にいかしていくこと、中教審にも日高教として意見表明をしていきたいという話しをされましたが、この提言をもとに、それぞれの高校で実践に取り組みながら、政策に反映させていけるようにしていくことが求められていると思っています。
このフォーラムは、日高教が、高校授業料無料化の第一歩を踏み出した新たな情勢のもとで、教育の無償化の実現と「無償教育」の理念にふさわしい、新たな教育政策の提言をめざして、2年間にわたる検討委員会の議論にもとづきまとめられた第1次提言「高校教育の再生の道はどこにあるか」(2011年5月)、第2次提言「若者の成長を社会全体で支えるために」(2012年3月)の概要説明と、それをもとに意見交換を行ったものです。
第1部〈日高教提言の発表〉では、5人の検討委員からそれぞれ執筆部分について説明がありました。
①高校の「入口」問題、義務教育と高校教育の接続について…与田徹さん(大阪府立大手前高校定時制)
②高校教育の改革の課題(教育課程、特別支援教育)…島貫学さん(京都府立朱雀高校)
③高校教育の改革の課題(職業・労働教育)…田村儀則さん(青森県立八戸水産高校)
④地域に根ざした学校づくりの課題…宮下与兵衛さん(長野県立赤穂高校定時制)
⑤高校教育と高等教育、社会との接続の問題…伊藤稔さん(埼玉県立伊奈学園総合高校)
すべての発表を紹介することは出来ませんが、私が高校教員のときに取り組んだこととも関連する③④について触れておきたいと思います。
田村さんの発表は、「新しい職業・教育論」と題し、すべての高校生に職業と労働の教育をおこなうために「職業科」を教科として導入することを提言したものでした。東日本大震災による生活や労働の困難、若者の非正規労働化やサービス残業の横行、労働環境の悪化の広がりなど、生活や労働の困難という潮流の中で若者たちは生きているとし、すべての人が安心して働くことができ、人間として生きていくことを支えてくれる社会をつくるために、社会を担う力を育てる職業・労働教育を、児美川孝一郎さん・本田由紀さん・竹内常一さんらに学び、改革や実践を進めていく必要があることを提起されました。
田村さんは、中教審キャリア教育・職業教育特別部会答申(2011年1月)が労働法制の改悪、働く労働者の権利については見向きもしていないと批判されました。問題はそれに対抗しうるキャリア教育の実践を、特に普通科高校でどこまで取り組んでいるのか、実践例を集め、到達点を明らかにし、より豊かな職業・労働教育のプログラムを作っていく必要があります。私も総合学習「人間・生きる」によるキャリア教育の実践を『高校のひろば』に紹介させていただいたことがありますが、東京の和光高校や神奈川の田奈高校などの実践を分析するとともに、児美川さんらのキャリア教育論を参考に、「職業科」を具体的にどのように編成するのかを検討していく必要があると思っています。
宮下さんの発表は、「高校つぶしから「地域の高校」を育てる流れをつくろう」と題し、地域住民とともに学校のあり方を考え、統廃合を阻止した長野県での取り組みを紹介したうえで、「地域の高校」を地域に開き、父母・生徒・地域住民が参加し共同する学校づくりを進めていくことを提言されました。
宮下さんは自身が関わった辰野高校の三者協議会などにも触れて、生徒の学校参加により、生徒たちは主人公意識・主権者意識を向上させていくこと、さらに、生徒たちは地域の課題について学び、調べ、発表し、さらに課題解決のために地域住民と話し合い、まちづくりに参加して住民と協働していくことで、シティズンシップ(市民意識)を向上させていることを紹介し、学校づくりと地域づくりを結びつける実践を進めていくことの重要性を提起されました。
宮下さんの辰野高校での三者協議会の取り組みに始まる「開かれた、参加と共同の学校づくり」は、全国各地に広がっています。私も学校で三者協議会を提起し、足かけ5年間にわたり取り組んできました。最初は生徒の施設改善の要望から始まりましたが、4年目・5年目にはよりよい授業をつくっていくために生徒・教員から授業改善に向けて意見交換が行われるまでになりました。そのなかでリーダーとなった生徒たちは大きく成長していきました。
東京や大阪で進められている校長権限を強化し職員会議を形骸化するような学校運営では、教職員は元気にならず、学校評価制度・教職員評価制度のもとで教職員同士が同僚性を失い、職場は多忙化し、自主的な研修も激減するという問題を生み出していくことになります。その意味では、困難な状況の中で、新しい学校づくり、すなわち「開かれた、参加と共同の学校づくり」をどのように進めていくのかはとても大事だと思っています。
第2部〈日高教提言についての意見交換会〉では、浦野東洋一さん(帝京大学)がコーディネーターになり、中田康彦さん(一橋大学)、高橋亜美さん(児童養護施設等退所者のアフターケア相談所「ゆずりは」所長)、岩井佑樹さん(法政高校生)がそれぞれの立場から意見が述べられたあと、フロアの参加者から提言に対する意見が述べられました。
フロアからの意見では高校での特別支援教育に関連する質問や意見が多く出されました。
中田さんは、提言に対する意見発表として3点について述べられました。
(1)仕事・社会との接続の問題。教科として「職業科」を独立させ、普通科における職業・労働教育を導入するという提言であるが、総合学科がそのモデルケースではないかと思っていたが、普通科で出来るのか。
(2)適格者主義について。高校の入口の問題として適格者主義から希望者全員入学にするという提言だが、スローガンから一歩踏み出した取り組みだと思うが、最低限の基本学力(読み書き算)がない生徒を受け入れるが「補修教育」を行うとなると別立てで行うのか、条件整備はどうか、実践の場でどうなるのか、検討が必要。
(3)高校・大学の接続の問題。大学でもリメディアル教育が行われるようになっているが、高校段階と高等教育段階でどのようにつながれば良いのか。
高校教育をめぐる諸問題は多岐にわたります。日高教中央執行委員長の加門憲文さんが、開会の挨拶の中で、各学校・地域で学習・討論を広げ、学校づくり、教育を繰りひろげること、地域での教育論議を政策提起にいかしていくこと、中教審にも日高教として意見表明をしていきたいという話しをされましたが、この提言をもとに、それぞれの高校で実践に取り組みながら、政策に反映させていけるようにしていくことが求められていると思っています。

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