専門職大学4月開学

2019年4月から「専門職大学」が開学します。短期大学以来55年ぶりの新しい学校種の大学が誕生することになります。

専門職大学は、「深く専門の学芸を教授研究し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させることを目的とする」もので、従来の大学と異なり、特定の職業に特化した実践的な職業教育を行う高等教育機関です。企業などと連携して卒業に必要な単位の3~4割以上を長期の企業内実習などで修得させるほか、専任教員の4割以上を実務家教員が担うものとしています。
また、社会人が学びやすい仕組みとするため、課程は4年制で、前期(2~3年)と後期(2~1年)に分けて学ぶこともでき、課程修了者には学位(「学士(専門職)」)が授与されます。社会人が入学する場合は、実務経験に応じて修業年限を短くすることもできるとしています。
この4月には、高知リハビリテーション専門職大学(高知県)、国際ファッション専門職大学(東京・名古屋・大阪)、ヤマザキ動物看護専門職短期大学(東京)の2大学・1短大が開学します。

この専門職大学創設の経緯と今後の課題について朝日新聞が解説記事を掲載しました。(『朝日新聞』2019年3月25日朝刊)

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『朝日新聞』2019年3月25日朝刊

この記事では、安倍首相肝いりの教育再生実行会議が、国際性や変化への対応力があり、高度な職業能力を持つ人材の育成という産業界の意向を踏まえ、「質の高い実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」の制度化の提言があり、これを受けるかたちで中央教育審議会が具体的な制度設計を提言、文部科学省は19年春の運用開始をきめた、という専門職大学創設の背景、経緯を説明しています。そして、開学する2大学、1短大の概要を紹介、「質の高い職業人」が育成できるかとし、今後、多くの専門職大学が出来れば、「既存の大学が刺激を受け色々な方向性を模索するきっかけになる可能性もある」(金子元久筑波大学特命教授)と、専門職大学が定着し広がっていくかがカギだと指摘しています。


この記事にもあるように、全国専修学校各種学校総連合会(全専各連)は、専門学校が学校教育法の第1条に規定される学校種でないことから私学助成が受けられず、国の施策から抜け落ちることも多く、「一条校化」の運動を進めてきました。しかし、文部科学省や中央教育審議会は、大学や短大の反対もあり、実践的な職業教育を行う新たな学校種の創設は見送られ、代わりに文科省は、2014年度から専修学校の枠の中に一定の要件を満たした学科について「職業実践専門課程」として認定する制度を作り、専門学校における職業教育の水準の維持向上を図りました。ところが、その直後に、教育再生実行会議が「質の高い実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」の制度化の提言をし、専門職大学が創設されました。
文科省は職業実践専門課程が新たな職業教育の枠組として作りながら、一条校としては新たな学校種として専門職大学が制度化されることになり、首相官邸に振り回されました。職業実践専門課程が一条校化へのステップになるものと期待した専門学校は、ある意味裏切られた格好になりました。

こうした紆余曲折はあったにせよ、このブログでも指摘してきたように、実践的な職業教育に特化した専門職大学が創設され、職業実践専門課程から専門職大学への編入が可能となれば、大学などのアカデミックな教育を上に、職業教育を下に見る社会的風潮に風穴を開ける可能性もあります。
専門職大学が社会の中で評価されるためには、幅広い教養と専門的な知識・能力をともに身につける職業教育を行うこと、教育課程の編成にあたっては産業界等との連携を図るにせよ大学側の自主性・自律性を保持して編成すること、また職業能力の育成とともに労働法教育など「対抗的なキャリア教育」(児美川孝一郎)にも取り組むことなどが必要だと考えています。

リクルート進学総研が2018年に全国の高校を対象に行ったアンケート調査によれば、専門職大学の認知度は91.9%、「名称、内容まで知っている」は41.6%で、専門職大学への期待としては「社会ニーズに対応した人材育成」(35.5%)、「実践的な教育内容」(32.8%)、「現在の大学・専門学校ではできない教育」(24.4%)となっていますが、懸念として最も多いのは「現状の専門学校との違いがわからない」が42.7%を占めています。(リクルートマーケティングパートナーズ「高校教育改革に関する調査2018」専門職大学編、2019年2月)
高校現場では、専門職大学ができることは知っていても、専門学校との違いがよくわかからないという現状が浮き彫りになっています。

今後も専門職大学、専門学校の動向を見守っていきたいと思っています。

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