幼保無償化と保育園の質向上

保育園が不足し待機児童が増えている中で、待機児童対策として政府が奨励して全国に広まっているのが、民間企業による保育所増設です。
一方、政府は5月31日、3~5歳児の幼児教育・保育無償化に関して、無認可施設を含めて、月3万7000円を上限に補助することを決め、消費税を10%に増税する2019年10月に全面実施する予定にしています。

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『東京新聞』2018年6月1日朝刊

待機児童対策のために保育園が乱立し、保育園による質の格差も顕著になり、子どもを虐待する保育園も少なくないことがあきらかになってきており、小林美希『ルポ保育格差』(岩波新書、2018年)は、待機児童問題の影に隠れて保育園の格差が進行している実態を明らかにしています(http://yamatea.at.webry.info/201805/article_9.html)。
『朝日新聞』2018年6月1日朝刊の「オピニオン&フォーラム」欄には、嵩山由紀子さんが「保育園新設 中身に目を向けて」で、企業立の保育所の立ち上げに参加したものの、子どもを預かる責任の重さを認識しないまま手厚い助成が受けられることから保育所が作られていくことに疑問を抱き、その保育園に勤めることを辞退したことを綴り、「保育や教育の充実をはかる手立てをもっと考えるべきではないか」と訴えています。

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『朝日新聞』2018年6月1日朝刊

待機児童対策のために保育所の増設を急ぐあまり、規制緩和が進み、保育格差が深刻なまでに進行しています。子どもを預ける親の立場からは、どの保育所であっても安心して子どもを預けられ、子どもが健やかに成長する場でなければなりません。
ところが政府は、子どもを預けたいと希望している親が認可保育所に入れない現状、また、認可保育所と無認可施設との格差、認可保育所の中の格差も進行している現状があるにもかかわらず、無償化だけを進めようとしています。無償化によって確かに親の経済的負担は軽減されますが、子どもにとって最も大切な質の向上についての具体的な政策はありません。規制緩和を進めて質の低下を進行させているのが実態です。

吉田正幸さん(保育システム研究所代表)は、無償化になると「保護者のモラルが低下し、子どもを長時間預けたり、多少質が悪くても何も言わない人が増える」こと、長時間保育の子どもなどが増えれば、職員の負担は重くなり、人材不足がより深刻化し、財源が足りなくなり、「施設の運営費を削られたりしたら本末転倒になる」ことなどの影響を指摘し、「すべての幼児に質の高い教育を提供し、生涯にわたる学習や人間形成の基盤をつくるというのが幼児教育の目的」であるが、その質の向上の視点がないことを批判しています。(『東京新聞』2018年6月1日朝刊)

幼保無償化の前に、まず政府がやるべきことは、希望するすべての親が認可保育所に入れるように待機児童対策を進めること、行き過ぎた規制緩和を直ちにやめて、すべての保育所が安心して子どもを預けられるように質の確保、保育士の確保のために保育士の待遇改善のために財源を使うべきだと考えています。


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