キャリア教育の内容

1月6日から授業が始まり、大学のキャンパスにも活気が戻りました。

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今週の「進路指導論」の授業のテーマは「進路学習・キャリア教育の内容」。

文部科学省の協力者会議報告書や中央教育審議会答申では、キャリア教育で身につけるべき能力として、例えば後者の答申では「社会的・職業的自立、社会・職業への円滑な移行に必要な力」の要素として、「・基礎的・基本的な知識・技能、・基礎的・汎用的能力(人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力、キャリアプランニング能力)、 ・論理的思考力、創造カ、・意欲・態度及び価値観、 ・専門的な知識・技能」をあげ、とくにキャリア教育では基礎的・汎用的能力を身につけさせることが提示されていること。

一方、全国進路指導研究会の菊池良輔は、キャリア教育で学ばせたい内容として、「①労働は、人間の生存と生活の基本的条件を創るものであること、 ②人間は、「学ぶこと」と「働くこと(労働)」を通じて、能力を発達させ、人格を豊かに形すること、③人間と人間は、労働を通じてつながり合うこと、④したがって、労働は人間の義務であると同時に、基本的な権利であること、 ⑤しかし、現代の労働は、その多くが企業の利潤追求の目的に組み込まれ、人間の権利として保障されないばかりか、健康を損ね、人間性を破壊させえる契機をも含んでいること、⑥現代社会には、さまざまな職業、多様な働き方があること(できるだけ、その実際。そこで働く人たちの思いも-。パート、派遣、請負…など、多様な雇用形態が出てきている今日、教える側がアクチュアルな勉強をする必要も痛切に感じられる)、 ⑦働くのものの権利と、その実現への道すじ(労働三権・労働三法、女子差別撤廃条約、男女雇用機会均等法、労働組合、社会保障など)、⑧労働と生活における技術の役割」を提示していること。
また、児美川孝一郎が『権利としてのキャリア教育』の中で提示している、I.労働についての学習、Ⅱ.職業についての学習、Ⅲ.労働者の権利についての学習、Ⅳ.自己の生き方を設計し、わがものとするための学習、V.シティズンシップ教育、Ⅵ.専門的な知識や技術の基礎の獲得、について紹介しました。

次いで、進路学習・キャリア教育で活用できる教材として全国高等学校進路指導協議会が編集している『高校生の進路ノート』『高校生のキャリアノート』を紹介しました。前者の教材は私も編集委員として関わったものです。

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キャリア教育が、若者を労働の世界に向けての「適応」と「抵抗」の両面で力づけることが必要であるにもかかわらず、現状は「適応」に偏ったものになっているという本田由紀の指摘を紹介した上で、「抵抗」の教育としての労働(法)教育について、その必要性や高校での実践例を紹介しました。

学生の感想には、次のようなものがありました。

・私も「進路ノート」を使った覚えがあるが、「進学」の部分ばかりやって、働くことを考えたり、現代社会の実態を知るような取り組みはなかった。学年が上がると、就職や進学のどちらかにかたよってしまうことは否めないが、せめて入学した年には、社会に出るために最低限学んでおいた方がよいと思う。
・今日の授業で「高校生の進路ノート」や「高校生のキャリアノート」のような本があることを初めて知りました。そのような本を手にした覚えがないのですが、概要をみるかぎり授業の後半でお話しされていた労働者の権利についても書かれているのでは、と思いました。思い返してみると、労働者の権利について授業で教えてもらったのは中学校が最後のような気がしました。(高校は選択がバラバラのため)高校のランクにかかわらず進路ノートやキャリアノートが活用されて、もう一度意識付けがなされればブラックバイトなどがもう少し発見されたかもしれないと思いました。
・進路指導の具体的な内容について学んだ。キャリア教育で学ぶことは非常に多岐にわたり、職業について多くの情報を提供し、考えさせることが重要だと感じた。現在の労働の実情について正確に伝えることが重要だと思う。

・今回の授業のレジュメでは、キャリア教育の内容としていくつかの例が列挙されていた。私はその中で児美川孝一郎さんの「権利としてのキャリア教育」に見られる内容の分類が、最も端的でわかりやすく、納得できるものであると感じた。ⅠⅡⅢⅣは生徒が将来的に働くときに必要となる実用的な知識の習得であり、ⅤⅥは生徒の人生の軸ともなりうる、抽象的ではあるが重要な考え方、能力の習得であろうと思う。この2種類を入れ込んだキャリア教育こそ、本当に生徒のためになる、優れたキャリア教育といえるのではないか、と私は考える。
・菊池良輔さんの「いま「働くことを学ぶ」ということ」は大変興味深い内容でした。いままで自分が受けてきたはずの内容だと思いますが、改めて学び直すことができ、また、明確にまとめられてとても分かりやすかったです。「働く」って何なのだろうか、という根本的な疑問を解消し、自分の軸を立て直していけるような気がします。

・労働におけるさまざまな権利が、法律等で保障されているとしても、それに従われていないのが現状であると思う。また労働環境におけるトラブルは複雑化しており、対策を注意深く練らなければならない。そして労働の程度に応じた賃金が支払われてない等、現在の労働状況はかなり大変な状況である。こうした事実を知る権利が生徒側にもある。こうした現状を知った上で、労働について考える機会を生徒に与えるべきであるのではないか。
・私の高校では労働に関する授業がなかったので、仕事に関して学ぶ機会があればよかったなぁと思った。大学進学のことばかりの進路指導だったが、将来のことを見すえた大学進学の進路指導を受けたかった。
・キャリア教育においては、どのような職に就きたいかを生徒に気づかせるよう働きかけたり、就活の援助をしたりといった内容だけでなく、職業に就いた後のあり方、理不尽なことを経験した際の対応の仕方もしっかり教育していくべきなのだと思いました。
 また、私の高校生のころに進路ノートなるものを書いた記憶がありますが、あまり真面目に取り組まなかった気がします。むずかしいことだとは思いますが、教師の側で、こちらの意図を生徒にくんでもらえるよう努力していくべきだと思います。
・進学者より就職者のほうが高校生の時点での労働者の権利に関する知識の理解度が低いというのは意外だった。進学者に比べてそのような知識の必要性が高いにもかかわらず、知識獲得がすすまないのは、そもそも働くにあたって度のような知識があると有利なのかがあまり知られていないからではないかと思う。

・労働に関する知識・知恵を学校において教育することは極めて重要で必須なことだと思いましたが、田奈高校の教材の完成度を求めることはかなり難しいのではないでしょうか。例えば、社会・公民を専門とする教師であれば、教科教育と重なる部分もあるかと思いますが、それぞれ教科教育の準備もしなければならない中、総合学習として、別にワークシートを作ることは仕事量が規格外ではないでしょうか。こうしたことも、自分が受けてきたキャリア教育のような、無味乾燥な「進学指導」に終始する現実を反映しているように思います。専門の教員を増設するわけにはいかないのでしょうか。
・働くことについて考える資料がこれだけあるにもかかわらず活用されていない現実は何なのでしょう。

・教員の労働条件が労基法等を一切度外視したものである中、中・高生に労働教育を行う必要性が喚起されているというのは、皮肉な印象も受けるが、実際に必要なことであると思う。
・労働に関する法制について、現在の日本の教育においては、あまり取り上げられていないと思います。取り上げられていたのは、中学・高校における「公民」か、大学においては法学の授業くらいでしょうか。おそらく、労働法に関する認識が低い人が多いと思います。認識が低いとどうなるか。労働法をよく「知る」者によって、「知らない」者が妨げられる状況が成立すると考えます。「知らない」ことによって、自分の権利が侵害される構造は、憂慮すべきものと思います。自分も社会に出る前に“労働”に関する知識を深めていこうと思いますし、教育においても生徒に十分に理解させるよう何らかの体制を組むべきであると考えました。
・本日の授業で学んだ”労働(法)教育”という観点は大変重要なことであると考えました。これからの社会へ生徒を送り出してゆくことを考えると、その実態、労働そのもの、職場環境や法の側面にも目を向けることは不可欠であると感じます。
 また、高校時代における生徒の実体験(皆で集まって何かを成功させるという体験が、やがて職場へ入ったときにも活かされることにもなる)という視点にも、深く納得することができました。
 労働の具体的な内容といった、ある側面のみにかたよった教育ではなく、多角的な視点を持つことが大切であると感じました。




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