「学校から仕事への移行」プロセスの変容

今週の「進路指導論」の授業は、なぜキャリア教育に取り組む必要があるのかを考えるために、「「学校から仕事への移行」プロセスの変容」をテーマに話をしました。

画像


1990年代後半以降、長期安定雇用と年功型賃金を柱とするいわゆる「日本型雇用慣行」の転換が図られ、雇用の流動化と柔軟化が進められ、正規労働者が減少し、非正規労働者が増加しました。その結果、新規学卒一括採用が縮小するとともに、長時間労働など労働条件の劣悪化や法律・人権を蹂躙するような働かせ方が増大しました。一方、高校生には、学力・進学競争の「弛緩」が進み、「上層」を目指す子どもたちには過熱した学力・進学競争がある半面で、「中・下層」の子どもたちには学力・進学競争に見切りをつけたり、適度に折り合いをつけたりしている状況が見られます。そして今日の子どもたちの進路展望は、その属する学力競争上のポジションによって、その現れ方は異なるにしても、全体として困難と「閉塞」をかかえていること、それえ、「学校から仕事への移行」プロセスの困難化という状況に立ち向かうべく、子どもたちを苑パワーするための学校教育の課題は、いま学校が総力をあげて取り組むべき課題であり、キャリア教育はその取り組みの主軸をになうべきものではないか。
そのような話をしました。

学生たちのリアクションペーパーには、次のような感想がありました。

・授業で紹介された本田由紀さんの「戦後日本型循環モデル」は非常にわかりやすい図式だと思いました。この図式は現在変化しているとされますが、一方で依然として残っている部分もあると感じます。特に私の身の周りには学歴信仰が根強くありますし、そふぼのはなしをきいてもそれを強く感じることがあります。ですが、データとして確実に変化は読み取れ、新たな時代を迎えていることは明らかです。このように変わっていく流動的な時代の中、就職活動をしていく私たちは、現実をよく見ていかなければならないと思います。そして、次の世代に対してもきちんと情報を伝え、新たな流れに適応できる人材に育てていく必要性を感じます。
・学校から仕事への接続の問題は、自分の中で最も重要視しているテーマの1つです。このテーマを考えることで、現代の日本の社会問題がよく見えてきます。テーマをさまざまな点を見て1つ感じたことは、(残念ながら)日本の社会状況は悪循環に陥っているということです。悪循環に陥っているからこそ、すこしでも状況が悪くのをくい止める必要があると思います。このような状況下において、私たちが生き残っていくには、どうすればよいか。私の意見としては、どのような道に行くにせよ、自分に武器(能力など)を社会に出る前に身につけておくことが大事だと考えています。つまり付加価値をたくさんつけていくことです。

・少し前の時代であれば、勉学に励み、大学に行けば、卒業して、ある程度の会社に入社して、安定した生活が得られるという明確な目標があり、良い悪いを問わず、それを望むのなら必死に勉強居すれば良かった。つまり、勉強と仕事との内容ではなく、進路のつながりがハッキリしていた。しかし、社会が変化して、就職もなかなか難しいということになり、また価値観の変化(勝ち組になることがそんなに良いのか?など)が生じ、自分の本当にやりたいことをするのが重要視されるようになってくることで、やりたいことを見つけられた人々の進路も大学一辺倒でなくなるし、見つけられない人は取りあえず進学するとか、引きこもるとか、それなりになっているような気がしている。
・雇用をめぐる問題や大学中退・離職の率が高いことが顕在化して問題視されていることは確かでしょうが、一方で、中退率や離職率が高いことも、「個人の生きたいように生きる」という観点からすると、安易に数字だけ見て判断することはできないように感じます。行き詰まったりやる気がなかったりして中退、離職するのか、ほかにその人にとって価値あるものを見つけてその道で生きることを決断したのか、その実態調査が必要です。「高校へ行き、大学を出て、良い企業に入り、そこで一生働く」ことが幸せである、という前提に立つと、データを見誤ることもあるのではないでしょうか。

・”そこそこ感覚”という言葉は初めて耳にしたが、いまの子どもたちの心理状態やそれに基づく言動を如実に言い当てた言葉だと感じた。
 上層を目指す子どもたちと中・下層の子どもたちの二極化は身をもって実感する。ただ、上層と中・下層どちらに身を置くかは、子ども自身の意欲よりも育ちの部分(親のしつけ、教育など)の影響が大きく関わっているのではないかと感じる。
 また、私自身も将来何をしたいかは大学に入ってから考えれば良いし、むしろ大多数の人がそうだろうと思っていた。しかし、大学生活はあっという間だし、進路を決めるのは大学生になったからといってパッとできるものではない。だからこそ、義務教育期間、高校、大学と連続性のあるキャリア教育をしていくことが必須だと思う。
・本日の授業にて学んだ”「学校から仕事への移行」プロセスの困難かという状況に立ち向かうため、子どもたちをエンパワーするための学校でのキャリア教育”という観点について、深く納得いたしました。
 学校現場における進路指導の現状としては、やはりどうしても”大学はどうするか?”という視点ばかりが大きく取り上げられてしまい、社会全体の情勢の把握(学校から仕事への移行プロセスの困難化や実際の労働現場における様々な問題など)については特に焦点が当てられていないように感じます。
・非正規雇用者や未就職者が増えていることと、若者のモラトリアム期間がのびていることは関連していると思われる。これをすべて教育現場の責任にしてしまうのは無責任かもしれないが、子どもたちに職業意識や自立心を植えつけられていないという点は指摘できよう。(私には受験意識ばかりのように思われる)学びだけでなく、生活することに関しても「そこそこ感覚」を持ってしまっている。授業でも強調されたように、こうした風潮を変えるためにも、キャリア教育がまさに中心となるべきだと思うし、教員側もその重要性を再認識して取り組むべきだと思う。

・子どもの貧困は本当に深刻と思う。今日のお話にもあったが、他の教職の授業でも、”6人に1人は相対的貧困”という現実を目の当たりにし、大学で勉強している我々には正直想像がつかない状況が実際あるということを知った。
 キャリア教育含め、学校(=公教育)は極力そのような構造の再生産を絶つために機能しなければならないはずだが、これがなかなか難しい。クラスに確実にいる、苦しむ子どもとどう向き合うか、教師を志すものならば、勉強し考えなければならない。
・労働世界の現状について、具体的な数値やグラフで示されていたので、事態の深刻さがはっきり伝わってきて、理解がすすんだ。
 両親の労働状況や収入によって子どもの学習にも影響が出てしまう、というのは当たり前のことではあるけれども、軽減、解決していかなくてはならない問題だと感じた。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック