『維新政府の密偵たち』を読む

大日方純夫さん(早稲田大学)から『維新政府の密偵たち』(吉川弘文館、2013年)を送っていただきました。ありがとうごさいました。

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大日方さんは警察史や自由民権運動の研究者として知られていますが、本書は、1871年の廃藩置県後、維新政府が設置した太政官正院直属の情報機関として設置された「正院監部」の実態を明らかにしたものです。
草創期の維新政権にとって、政権の安定を図るために、中央と地方に配置した役人たちの動向を監視することは、欠かせない課題となっていました。1974年になると、監部派出の目的は「時態人情ノ変遷ヲ速知」することと規定され、これまで重点が置かれていた管理に対する監視から、社会情勢や国内状況の偵察へと、監部が果たすべき役割が変化していきます。府県治の状況、官吏の勤務状況とともに、人情の様子、苦情の有無、士族の様子と生計の状況などに注意を向けるように指示されています。本書では、富国強兵・殖産興業政策が推進されていく中での、監部の目を通した住民の状況が描かれています。

政府首脳の中で監部を担当したのは、参議の大隈重信でした。それを裏付けるように、早稲田大学所蔵の大隈文書には、探索書・報告書が数多く含まれており、その中には「監部」と記されているものが認められるということです。その中には、名前を変え、キリスト教内部に潜入し、洗礼まで受けて内部情報を政府に送り続けた人物など、大隈をはじめ様々な人々の裏面史を浮かび上がらせていて、興味深い事実が明らかにされています。
 
本書は、密偵の実像と活動を通して、明治初期の政治・社会状況を、通常の情報では知り得ない社会の深部や裏面から浮かび上がらせ、もう1つの明治維新史へと、読者を誘うものとなっています。
興味のある方々にぜひ読んでもらいたいと思っています。

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