大佛次郎論壇賞に今野晴貴さんの『ブラック企業』

朝日新聞社主催の第13回大佛次郎論壇賞に今野晴貴さん(NPO法人POSSE代表)の『ブラック企業-日本を食いつぶす妖怪』(文春新書、2013年)が受賞することに決まりました。おめでとうございます。

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『朝日新聞』2013年12月21日付朝刊

ブラック企業は若者を大量に正社員として採用して過酷な労働環境でうつ病や退職、過労死に追い込むもので、新興企業に多くなっています。日本型雇用の特徴である長時間労働と終身雇用を悪用し、ブラック企業は長時間労働で「使える者」を選別し、残りの者はパワハラなどで人格を破壊し、自己都合退職に追い込んでいく企業です。
今野さんは、POSSEでの若者の労働相談を通して若者が労働現場でひどい状況に置かれていることをふまえ、ブラック企業の特徴を明らかにするとともに、ブラック企業が医療費や社会保障費を増やし、若者の将来を奪って少子化の原因にもなっているとし、コストを社会に転嫁していることも明らかにして、個別のブラック企業の告発にとどまらず、大きな社会問題であることを指摘したのでした。

今野さんは、受賞のインタビューの中で、福祉関係者や弁護士と「ブラック企業対策プロジェクト」(http://bktp.org/)を立ち上げこと、就活する大学生のために「ブラック企業の見分け方」という冊子を無料でダウンロードできるようにしたことを紹介するとともに、高校・大学での労働法教育をやってほしいと注文しています(『朝日新聞』2013年12月21日付朝刊)。

私の問題関心からいえば、たとえブラック企業に入社せざるを得なくなったとしても、労働法の知識を身につけさせるとともに、労働時間やパワハラなどの記録をつけておくことや、何かあれば専門家に相談することを教えておく必要があと思っていますが、残念ながら高校にしても大学にしても、労働法教育に取り組む姿勢は全体として弱いのが現状です。高校でいえば、公民科の授業の中に、また、キャリア教育の中に労働法教育をきちんと位置づけて取り組むことがいまこそ必要だと思っています。

それとともに、今野さんも指摘されているように、ここまで違法と労働者の使い捨てがまかり通るのは、労使が非対称であることにあります。労使の対等を確保するために大きな役割を果たすのは労働組合です。労使協調で企業の言いなりになる労働組合ではなく、労働者の人権をきちんと守っていく労働運動の展開が求められていると思っています。

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