『日本の奨学金はこれでいいのか!』を読む

奨学金を利用する学生の割合は年々増加し、2010年には50.7%と、実に学生の2人に1人が借りていることになります。しかし、卒業後、思うように奨学金の返済ができず、滞納してしまったり、債権回収の訴訟に訴えられるケースが急増しています。

この奨学金問題、奨学金返済問題にいち早く着目した大内裕和さん(中京大学)や伊東達也さん(弁護士)らが中心となり、奨学金問題対策全国会議がつくられたのを機に、日本の奨学金問題の現状と問題点を明らかにし、改革のための提案を示したのが、奨学金問題大差軍国会議編『日本の奨学金はこれでいいのか!』(あけび書房、2013年)です。

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本書の構成は、次のようになっています。
第1章 教育における格差と貧困-「貧困ビジネス化」した奨学金問題から考える(大内裕和)
第2章 若者の借金奴隷化をたくらむ「日本学生支援機構」-延滞金を膨らませて骨までしゃぶる”奨学金”商法(三宅勝久)
第3章 「奨学金被害」の実態と救済への道-制度上の問題、救済制度活用、そして改革への提言(岩重佳治)
第4章 座談会 日本の未来を奪う「学生ローン=奨学金」(岩重佳治、大内裕和、藤島和也、三宅勝久)

第1章は、総論で、日本の奨学金制度が貸与型でしかも、利子付き貸与型奨学金が急増し、この間の日本型雇用の解体にともなう非正規雇用の増加で、大学卒業後の奨学金返済の滞納者が急増し、奨学金という名のローンが学生とその親を追い込み、教育における格差と貧困をより深刻化させていることを明らかにし、奨学金問題改革のための提案として、延滞金制度自体をなくすこと、奨学金の返還猶予期限を撤廃すること、有利子奨学金の無利子化と給付型奨学金制度を導入することを提案しています。

第2章は、日本学生支援機構の奨学金が学生ローンにほかならず、奨学金の返済が出来なかったために10%の利息が取られる延滞金、利息、元金をあわせると到底、返済できない額となり、自殺をした女性や、難病で働けなくなり貧困に陥っても、奨学金の繰り上げ一括返済を請求する訴訟を起こされた女性など、奨学金地獄の実態をルポしたものです。

第3章は、弁護士の立場から、実際に相談・救済活動をしている現場からの、相談・救済事例を報告したもので、第4章は、座談会記録ですが、奨学金問題について総括的に論じています。

日本の奨学金制度が、日本学生支援機構が奨学金を「金融事業」と位置づけているように、奨学金という名の学生ローンとなっており、返済できなければ延滞金が発生し、払えない人に、さらにそれ以上の額の返済を迫るシステムとなっています。返済期間が長期化し、大学で学ぶために借りたお金で一生涯、負債に苦しむという状況が現出しています。 大内さんが指摘するように、本来は、未来への夢や希望を実現するための奨学金が、日本では、むしろ未来への夢や希望を失わせるものになっていることは、大きな矛盾です。
OECD34か国のうち、大学授業料無償が17か国、残りの17か国中16か国に給付型奨学金制度があります。大学授業料が有料でかつ給付型奨学金がないのは日本だけです。日本の大学教育への公的支出は、世界の中で突出して少なく、学生と親は高い学費に苦しめられています。100万円以上の学費を用意できない家庭は進学をあきらめざるを得ない状況になっています。
日本政府は、2012年に、高校・大学までの段階的な無償化を定めた国際人権A規約の「留保撤回」を国連に通告しています。高校・大学の無償化は国際公約になっています。高校の無償化については安倍政権によって所得制限を導入するという後退がなされましたが、大変問題と言わざるを得ません。給付型奨学金の導入とともに、高校・大学の無償化をすすめていくことが求められています。

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