『「デフレ脱却」は危ない』を読む

東京CPA会計学院校長の高橋幸夫さんから、息子さんである高橋淳二さん(同会計学院副校長、公認会計士)の処女出版『「デフレ脱却」は危ない』(技術評論社、2013年)をいただきました。

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現在、安倍晋三内閣は、デフレ脱却を目指し、「アベノミクス」といわれる経済政策を推進しています。円安が進み、株価が高騰し、景気が回復しているかのようにマスコミも報道しています。
書店にもアベノミクスを賞賛する書物が平積みにされ、4月28日の新聞には、安倍内閣のブレーンである本田悦朗氏(静岡県立大学)の安倍総理公認本『アベノミクスの真実』(幻冬舎、2013年)の広告が大きく掲載されています。

しかし、本書は、そのような本とは一線を画し、「複式簿記的視点で見る経済学」という見地から経済事象を分析し、アベノミクスには賛同できない、としています。
高橋さんは、デフレがよい経済環境とはまったく思ってはいないが、しかし、現状をインフレに転換するのは非常に困難であり、もし無理やりにデフレ脱却を実現したら日本経済は大変なことになると警告しています。

現在、日本政府の債務は1000兆円を超え、GDP比200%をオーバーする異常な規模になっています。それにもかかわらず、ギリシアなど国家財政破綻の危機が叫ばれている欧州の国々とはちがって、すぐに日本政府が財政破綻に陥るという事態になっていないのは、日本政府は債務(国債)のほとんどを国内の民間資金でまかなっているからだと指摘します。日本政府の債務は本質的な債務ではないので、日本国債は大量に発行しても「札割れ」しない無敵状態であり、国債利回り(長期金利)が跳ね上がる兆候も見られない、と説明します。

いま国民は、デフレのせいで経済がおかしくなっているという論調が蔓延し、デフレを脱却するためインフレに転換しなければという暗示にかけられています。もしインフレにより金利が上がれば、巨額の債務を負う日本政府は、利払い負担に窮することは誰もが予想しますが、国債は長期固定金利で発行されるため、それは喫緊の課題にはなりません。実は、政府よりも先に、既発国債を大量に保有している国内金融機関が、金利上昇に起因する国債価格の暴落によって経営に壊滅的な影響を受け、日本の金融システムの壊死をもたらす、と高橋さんは指摘します。(国債発行残高919兆円のうち、ゆうちょ銀行を含む中小企業金融機関等が177兆円、保険会社が172兆円、国内銀行が141兆円を保有しており、金利が上昇すれば、保険会社など超長期国債を大量に保有している金融機関ほど甚大な損害を被る可能性が高く、国債残存償還期間を短めに抑えている銀行でも、わずか!%の金利上昇で6.4兆円の評価損が計上される、と指摘しています。)
低金利を維持しなければ日本の金融システムが崩壊しするので、その強力な低金利圧力がデフレをもたらしている、つまり日本経済が低迷し続ける問題の元凶は「政府の巨額債務」にある、というのです。

高橋さんは、アベノミクスのように「大胆な金融緩和」「国土強靱化で何百兆円の公共投資」「民間投資を促す成長戦略」などの政策でデフレを脱却し、経済が復活することは決してない、と断言し、政府が借金依存から脱却し、経済が「金利上昇への耐性」を得られる水準まで、債務残高を引き下げる必要があることを指摘しています。
では、「政府債務をどう減らすか」という具体的な方策、提言は残念ながら、本書ではなされていません。今回は「日本経済の病理を解明する」ことに紙幅の大半を割いたということですので、次の著書では、その具体的な提言を書いてほしいと思います。

アベノミクスで日本経済がよくなると考えている多く方々にこそ、ぜひ本書を読んでもらいたいと思っています。

この記事へのコメント

Tammy
2013年06月07日 22:53
経済オンチなので、読んで勉強しようと思います。

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