『ブラック企業』を読む

大学3年生の就職活動が12月1日に解禁となり、本格的な就活が始まりました。
企業が非正規雇用を増やしている中で、就活をする若者には「正社員にならなければいけない」というプレッシャーがかり、そこにまちかまえているのが「ブラック企業」です。

若者の労働相談を受け付けているNPO法人POSSEを立ち上げた今野貴晴さんが、『ブラック企業-日本を食いつぶす妖怪-』(文春新書、2012年)を出されました。

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ブラック企業とは残業代未払いやパワハラなど違法な環境で労働者を働かせている企業のことです。(今野さんは、「ブラック企業に定義はない」としていますが)
今野さん、若者を大量に雇用し、長時間労働や不条理な命令で徹底的に酷使し、脱落したものは鬱病に追い込み、「自己都合退職」で退職させていきます。離職した穴はまた大量採用で補い、同じことを繰り返す。若者を食いつぶす動機としては、選別(大量募集と退職強要)、使い捨て(大量募集と消尽)、無秩序(上司夜無意味な圧迫やパワハラ)がある、としています。

本書は多数の労働相談がベースにあり、裁判になったウェザーニュースや大庄、ワタミ、SHOP99は実名になっていますが、衣料販売大手X社という誰もが知る企業の事例も紹介されています。
しかし、本書は、ただ事例の紹介や告発に留まっていません。なぜこのような理不尽な雇用が広がっているのかという要因、こうした問題が招く社会的な影響精神疾患による医療費・生活保護費の増大など)についても言及されています。ブラック企業が跋扈する(今野さんは「すべての日本企業は「ブラック企業」になり得る」としています)要因には、その根っこに従来は高く評価されてきた「日本型雇用」(長期雇用と年功賃金が付与される代わりに、企業は強い経営の人事権が確保され、若者の長期勤続の意欲と企業への忠誠心を養うことができた)があり、それが変質する経済環境の中で、ブラック企業に悪用されていることを指摘しています。

進路指導・キャリア教育に携わってきた立場からは、今野さんが、若者の「職業意識の低下」が早期離退職を生んでいるとし、「キャリア教育の充実」が推進されていることに対して、「キャリア教育」がブラック企業への諦めを生む」と、その危険性を指摘しているのは、きちんと受けとめて、どのようなキャリア教育を進めていくことが必要なのかを考えていく必要があると思っています。
今野さんは、「「出口」のない中で職業体験・職業意識を養うことは、結局「規律」ばかりが追い求められ結果になる可能性がある。「あいまいな職業意識」の慣用は、結局はブラック企業が悪用している日本型雇用の弊害を強化しかねないただ仕事に対する「意識」だけを子供の内から繰り返し刷り込むことで、かえって企業内の「あいまいで強大な指揮命令」を強めてしまう恐れがある」と指摘しています。

確かに、これまで文部科学省や各都道府県教委が研究指定で推進してきたキャリア教育の実践例などをみていくと、中学校の職場体験学習や高校のインターンシップの取り組みの中で、社会ではマナーが大事であることや、仕事への厳しさを知ることができたことを評価するような実践例が多く、職場で違法行為があった場合の対応能力を身につける労働法教育に取り組んでいる事例はほとんどみられません。

学生だけでなく、学校教育に関わる教職員を始め多くの方々に読んでもらいたいと思っています。


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