三鷹の一日

アクセスカウンタ

zoom RSS 「ブラック部活」を考える

<<   作成日時 : 2017/08/06 21:45   >>

トラックバック 0 / コメント 0

生徒たちは、中学校や高校での部活動で、仲間との関わり、自分との葛藤や達成感、他者への感謝など、授業では得られないことを経験し、学び、人間的にも成長していきます。部活動は、「自主的な活動」であり、教育課程には位置づけられていないにもかかわらず、学校教育の中に深く根づいています。

しかし一方で、部活動によって、生徒にとっては、部活動が過熱し、練習が休めない、勉強に割く時間がない、練習過多による身体への負荷、安全配慮の欠如による死亡や重度障害、部内のいじめやしごき、顧問による暴力や暴言など、さまざまな問題で苦しんでいます。また、教員とっても、部活動顧問を事実上強制され、部活動指導のために時間外勤務、土日勤務を余儀なくされ、授業や生徒指導に向き合う余裕を奪われ、長時間労働を強いられ、苦しんでいます。

このような生徒にとっても、教員にとっても「ブラック」な部活動の実態を明らかにするととともに、具体的な解決策を検討し、新しい部活動指導のあり方を示す本が最近、相次いで出版されました。
島沢優子『部活動があぶない』(講談社現代新書、2017年)、内田良『ブラック部活動』(東洋館出版社、2017年)の2冊です。ここでは島沢優子さん(フリージャーナリスト)の本を紹介したいと思っています。

画像


島沢さんの本は、次のような構成になってます。
第1章「部活動がもたらす効果」では、部活動が仲間とのつながり、試合での勝利や目標をやり遂げた達成感、他者への感謝など、授業では得られないことを経験し、学び、成長すること、濃厚なコミュニケーションができる機会を得ることによってソーシャルスキルを養うことができることなど、「部活動がもたらす効果」を明らかにしています。
第2章「部活のいびつな歴史」では、戦後、国は子どもたちの自発的なスポーツ活動に大きな価値を置き、部活にその役割を期待し、勝利至上主義や対外試合を抑制してきたが、オリンピックでのメダル獲得のために、部活に競技力向上を求める動きに拍車がかかり、各競技での全国大会が高校だけでなく中学校でも行われるようになり、部活動は過熱化する一方、部活を非行防止のツールとして生徒に部活全入制度を採れ入れる中学校が増加するという「部活のいびつな歴史」を明らかにしています。
第3章「ブラック部活が止まらない」では、柔道や剣道での部活動での不適切な指導が原因で生徒が死亡した事例、桜宮高校体罰自殺事件をはじめ、顧問教員による不適切な指導・対応、暴力・暴言、セクハラなどによって生徒が苦しんでいる実態を明らかにしています。
第4章「教師にとってもブラックな部活」では、文部科学省の「教員勤務実態調査」やスポーツ庁の調査などをもとに、中学校教員の6割の労働時間が「過労死ライン」を超えており、特に休日の部活動時間が突出していること、中学校の運動部活で1週間あたりの休養日を設けていない学校が22.4%もあること、全員顧問制の学校が中学で約66%、高校で約51%あり、中学校教員の92.4%が顧問を担当していること、運動部顧問のうち競技経験なしが中学校で45.9%、高校で40.9%となっていること、教科よりも部活優先で、教師が育たなくなっていること、など部活動のために教員が疲弊し、教育にも影響を与えていることを明らかにし、その中で中学教員が「部活問題対策プロジェクト」を立ち上げ、部活顧問の選択制を求める署名活動をネットで行い、文科省に提出するなど、部活動を改革しようとする動きがあることを紹介しています。
第5章「ブラック部活の正体」では、休養を与えない、長時間の練習を強いる、暴力や暴言であおる、といったブラックな指導がなくならない要因、構造を明らかにしています。全国大会の頂点を目指す勝利至上主義のもと、部活でブラック名指導を受けてきた顧問は、自分がやられたことを望ましい指導スタイルとして受け継ぐ連鎖があること、保護者も「わが子への期待」から顧問に土日の部活動や体罰指導を容器有したり、部の運営に口を出すなど教師へ圧力をかける場合があること、学校側も非行防止のために生徒に部活を強制したり、学校の知名度を上げるために部活に力を入れていることなど、顧問、保護者、学校がブラック部活を支えていることを明らかにし、そのうえで、理不尽を強いられても我慢するブラック部活の経験がブラックバイトやブラック企業を疑わないまま受け入れていくことに繋がっていることを明らかにしています。
第6章「ブラック部活から子どもを守る」では、長時間の活動時間や顧問による体罰、部活内のいじめなど、部活問題から子どもの命と成長を守るため保護者がとれる対策を紹介しています。国や地方自治体などが制定している部活についての取り決めを確認すること、顧問に直談判しても解決しないときは校長に掛け合うこと、当該競技団体や自治体の相談窓口に相談すること、保護者が「結果主義」と「わが子主義」から脱却し、子どもたちの懸命い取り組む姿そのものを認めてあげることを提言しています。そして、「結果主義」と「わが子主義」からの脱却を保護者に要求して、多大な成果を手に入れた部活として、広島県立高校でサッカー部を指導した畑喜美夫さんの取り組みを紹介しています。
第7章「部活の未来のために」では、部活におけるスポーツ指導をどのように転換していったらよいか、体罰・暴言なしに上達させるための指導法、学校や社会がかかえる構造的な問題の解決策を提示しています。顧問教師や指導者が手に入れるべき新たな指導スタイルは、生徒の主体性を引きだし、自ら考え・取り組むようにすることであるとし、青山学院大学箱根駅伝の原晋監督やプロサッカーコーチの池上正さんの指導方法などをあげて紹介しています。また、部活動時間を短縮し、教員の残業時間の軽減に一定の成果を収めている自治体として、学校の部活と総合型地域スポーツクラブを結合させる取り組みをしている岐阜県多治見市の例を紹介しています。また、17年度から学校教育法に基づく「学校職員」に位置づけられるようになった外部指導員については、まだ多くの課題があることを指摘しています。

島沢さんは、あとがきの中で、「殴っても生徒は先生のお陰だと言う」「スポーツも楽器も歌も、練習しただけ成果が上がる」「部活さえやっていれば生徒は間違った道に進まない」「部活を頑張るのがいい先生」−。このような誤って刷り込まれた考えを丁寧に1つひとつはぎ取って、何が本質なのかを学校、教師、保護者、生徒みんなに共有してもらうべきだろう。そのためにもまず、当事者である生徒や教師の話に耳を傾けてほしい、と語っています。

ブラック部活をどのように克服すべきなのか。

大学の「特別活動」の授業で、この問題を取りあげました。日本体育大学の南部かおり准教授が企画し昨年11月から今年1月に開催された「学校・部活動における重大事故・事件から学ぶ研修会」の記事(https://news.yahoo.co.jp/byline/katoyoriko/20161215-00065403/)を読んだあと、島沢さんの本をもとに講義しました。

学生たちの多くが大学でも部活動をしており、将来、教職に就いたときには部活動の指導者になるので、きちんと考えさせたいと思っていました。

学生たちのリアクションペーパーには、次のようなものがありました。

学生の中には高校時代に体罰を受けていた学生もいました。
「日体大の卒業生が指導者をして重大事件や事故を起こした事例を見て、今回のプリントには書いていなかったが、私自身が受けた体罰をした先生も日体大の卒業生だった。野球部だった私は、尻バットはもちろん、近い距離でのノックなどで、グラウンドが血の海になったり、死亡者は出なかったが、ケガ人が多数出たりした。桜宮高校の体罰が起こったため、あまり大きく取りあげられてはいなかったが、もう体罰は起こってほしくないと願っている」

こうした体罰の問題は、体罰を受けた教員が生徒に体罰をするという連鎖、体罰で強くなるという精神論が根深くあり、そうした部活文化をいっそうする意見を述べる学生もいました。
「体罰問題について、幸いにも私自身は被害に遭ったことはありませんが、周りの運動を続けてきた人たちの話を聞くと、未だに潜んでいると感じたことがあります。指導者側や体罰を受けた側の意見をみたときに、体罰によって精神が強くなったし、競技力が上がったというのがあります。はっきり言ってこの意見に対して、体罰のおかげなのかと疑問を強く感じるし、経験則精神論にはしっている指導者はナンセンスであると思います。指導を受けた生徒が指導者になったときに、また体罰を乱用した指導者が生まれ、悪循環になってしまうという怖さを感じました。まずは根深く付いてしまった文化を取っ払っていかなければ、この問題は解決に向かわないと感じました」

部活指導をどのように解決していくかの問題では、教員の残業時間の軽減を図る「多治見方式」や、指導方法としての畑喜美夫さんの「ボトムアップ理論」に興味をもった学生もいました。また、教員の過労の問題や顧問選択制の問題に注目した学生もいました。
「体罰によって命を落とすことがあってはいけないと思う。体罰による処分を厳しくしていかなければ繰り返すと思う。過労の問題もある。まず手当が少ないため手当を充実させるべきだと思う。部活動に積極的でない先生もいるため選択制にすることも1つの解決策だと思う。ブラック名部活を少しでもなくすことができるように国全体で考える必要があると思う」

学生たちには、教職に就いたときには、部活動とどう向き合うのかが問われます。部活動のあり方をぜひ考えていってほしいと思っています。



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「ブラック部活」を考える 三鷹の一日/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる