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zoom RSS 専門職大学、2019年4月スタート

<<   作成日時 : 2017/05/25 07:54   >>

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質の高い専門職業人を養成するための「専門職大学」の創設を盛り込んだ学校教育法の改正案が5月24日の参院本会議で可決され、成立しました。2019年4月から開設されることになります。大学の制度に新たな教育機関が追加されるのは、1964年に短期大学が創設されて以来55年ぶりとなります。

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『朝日新聞』2017年5月24日夕刊

専門職大学は、「深く専門の学芸を教授研究し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させることを目的とする」もので、従来の大学と異なり、特定の職業に特化した実践的な職業教育を行う高等教育機関です。企業などと連携して卒業に必要な単位の3〜4割以上を長期の企業内実習などで修得させるほか、専任教員の4割以上を実務家教員が担うものとしています。
また、社会人が学びやすい仕組みとするため、課程は4年制で、前期(2〜3年)と後期(2〜1年)に分けて学ぶこともでき、課程修了者には学位(「学士(専門職)」)が授与されます。社会人が入学する場合は、実務経験に応じて修業年限を短くすることもできるとしています。

この実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の創設は、専門学校の全国組織である全国専修学校各種学校総連合会(全専各連)が2006年、「専門学校の高等職業教育機関としての地位を確立する」ことを目的に、専修学校を学校教育法の第1条に位置づけることを求める一条校化運動を推進したことから始まります。しかし、専門学校は大学と比較して設置基準が緩く、学校評価も行われていず、その質保証も問題とされ、一条校化は進展しませんでした。2008年の文科省専修学校の振興に関する検討会議では、職業教育機能に重点を置く「新しい学校種」の創設が議論されましたが、中教審で議論を深めていくことが適当とされ、結論は先送りされました。
そして2011年の中教審答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」では、高等教育レベルにおいて新たな「職業実践的な教育に特化した枠組み」を提起しました。この答申は、卓越した実務経験を主な基盤として実践的な知識・技術等を教授するための教員資格、教員組織、教育方法等やその質を担保する仕組みを具備した新たな枠組みを制度化し、その振興を図ることを求め、修業年限2年〜4年、職業実践的な演習型授業が4割〜5割、教員資格は実務卓越性を重視するなど、新しい学校種の創設の具体的な構想を提示しました。しかし、これも、大学・短大関係者の反対が強く、実現には至りませんでした。
このため文科省は、2014年度から専修学校の枠の中に一定の要件を満たした学科について「職業実践専門課程」として認定する制度を作り、専門学校における職業教育の水準の維持向上を図ることにしました。
ところが、職業実践専門課程がスタートすると、14年7月に教育再生実行会議は第5次提言(「今後の学制等の在り方について」)で、「実践的な職業教育を行う高等教育機関を制度化する」ことを提言、これを受けて文科省は10月に「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」を立ち上げ、有識者会議は15年3月に「審議のまとめ」を公表しました。そして、この有識者会議の「審議のまとめ」を受けて15年4月、中教審に特別部会を設置して審議、16年5月、答申「個人の能力の可能性を開花させ、全員参加による課題解決を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について」を文部科学大臣に提出しました。答申第1部「社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い専門職業人養成のための新たな高等教育機関の制度化について」は、変化への対応が求められる中、基礎・教養や理論にも裏付けられた優れた技能等を強みに、事業の現場の中核を担い、現場レベルの改善・革新を牽引していくことのできる人材、専門的な業務を担うことのできる実践的な能力とともに、変化に対応し、自らの職業能力を継続的に高めていくための基礎(伸びしろ)を身につけた育成が課題となると指摘、幅広い教養を学ぶ大学や、技能に特化している専門学校とは別の高等教育機関が必要だとしました。
この中教審答申を受けて政府は、2017年3月10日、「専門職大学」を創設するための学校教育法の改正案をこの通常国会に提出、衆議院、参議院での審議を経て、成立したものです。

こうした経過をみると、「専門職大学」という実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化は、大学・短大側の抵抗にあって「職業実践専門課程」の創設が行われたものの、安倍首相肝いりの教育再生実行会議で提言されたのを機に再び制度化が日の目を見るようになったことが分かります。その間の文科省の迷走は明かであり、専門職大学が創設されることになっため、職業実践専門課程の位置づけが中途半端なものになってしまいました。
文科省の「これからの専修学校教育の振興のあり方検討会議」が2017年3月にまとめた報告書「これからの専修学校教育の振興のあり方について」では、職業実践専門課程について、教育の高度化と改革を目指す専門学校の取り組みの枠組みとして位置づけ、情報公開の根拠規定を告示に位置づけること、実効的な第三者評価の導入等について検討すること、などが提言され、専門学校の質保証・向上の更なる充実がうたわれています。
一方、専門職大学の設置基準はまだ示されていませんが、大学の枠組みの中に入る以上、職業実践専門課程の認定要件よりは厳しい基準になり、大学設置基準の水準を踏まえつつも、校地面積や運動場等については弾力的な基準設定になりそうだといわれています。
いずれにせよ、職業実践専門課程も専門職大学も専門職業人養成に重要な役割を担う職業教育機関としての位置づけはほぼ同じだと言えます。

高校現場からすると、専門学校(専修学校専門課程)、専修学校職業実践専門課程、専門職短期大学、専門職大学、短期大学、大学と、生徒の進学の選択肢は増えていくことになりますが、各学校種の特色、位置づけを理解した上で進路指導をしていく必要があります。しかし、専門学校 と職業実践専門課程の違い、職業実践専門課程と専門職短期大学や専門職大学との違いを高校教員がどこまで理解して指導できるのか、疑問と言わざるを得ません。

株式会社さんぽうが2016年6月から7月に実施した、専門職大学について、高校教員にどう受けとめられているかなどを調査したアンケート結果が公表されていますが、それによると、専門職大学について「内容を知っている」は25%と低く、賛否の比較では、「賛成」が26.2%、「反対」が6.4%で、賛成理由は「社会のニーズに適合している」「進路選択の多様性につながる」など、反対理由は「専門学校・大学で対応できるので新たに創る必要性は感じない」などとなっています(「大学ジャーナル」ONLINE、2016年8月27日、http://univ-journal.jp/9253/)。
高校教員の認知度は専門職大学のみならず職業実践専門課程についても低く、これできちんと進路指導ができるのか、心許ない限りです。

今後、専門職大学を新設したり、既存の専門学校、とくに職業実践専門課程の中から専門職大学へ衣替えする学校は、それほど多くはないと予測されています。

とはいえ、このブログでも指摘してきたように、実践的な職業教育に特化した専門職大学が創設され、職業実践専門課程から専門職大学への編入が可能となれば、大学などのアカデミックな教育を上に、職業教育を下に見る社会的風潮に風穴を開ける可能性もあります。
専門職大学が社会の中で評価されるためには、幅広い教養と専門的な知識・能力をともに身につける職業教育を行うこと、教育課程の編成にあたっては産業界等との連携を図るにせよ大学側の自主性・自律性を保持して編成すること、また職業能力の育成とともに労働法教育など「対抗的なキャリア教育」(児美川孝一郎)にも取り組むことなどが必要だと考えています。
これまで大学、特に文系の大学は「職業実践的な教育から隔離されたアカデミックな機関だという壮大なフィクション」を守り続けてきましたが(濱口桂一郎『若者と労働』中公新書クラレ、2013年)、「教育と職業の密接な関係」に向けた専門職大学の創設は、大学の位置づけを変え、「教育と職業の密接な無関係」を名実ともに「密接な関係」に転換していく突破口になる可能性を持っていると考えており、専門職大学の動向を見守っていきたいと思っています。

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