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<<   作成日時 : 2016/01/14 07:44   >>

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若者がブラック企業で使い捨てにされたり、学業に支障をきたすブラックバイトなどの実態が明らかにされ、労働者自身が自らの身を守るために働くことに関するルールを学ぶことの必要性が認識されるようになり、ワークルール教育への関心が高まってきています。
現在の労働者、特に若者を取り巻く状況と、大学や高校など教育現場での取り組み、そして弁護士会での取り組みを把握した上で、今後のワークルール教育のあり方を展望することを目的に、日本弁護士連合会主催の「ワークルール教育シンポジウム」が1月12日、弁護士会館で開かれ、参加をしてきました。

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司会進行 菅 俊治さん(日弁連労働法制委員会ワークルールPT座長)
シンポジスト 上西充子さん(法政大学教授)
         成田恭子さん(神奈川県高等学校教職員組合副委員長)
         神部 紅さん(首都圏青年ユニオン委員長)
         水口洋介さん(日弁連労働法制委員会副委員長)
         和田一郎さん(日弁連労働法制委員会副委員長)
         淺野高宏さん(日弁連労働法制委員会委員、北海学園大学准教授)

シンポジウムでは、まず上西さんが、大学生のアルバイトに関する2つの調査(ブラック企業対策プロジェクトと厚生労働省の調査)から見えることとして、(1)違法行為・不当な扱いが蔓延していること、(2)シフトを会社の都合で勝手に変えられるなど、会社(店)の都合優先の勤務になっていること、(3)不当な圧に対して「何もしなかった」が多いなど、違法行為・不当な扱いを甘受していること、などを大学の授業での学生の声を紹介しながら指摘し、求められる対策として、(1)労働法を知る機会が必要であること、(2)そのうえで、知識だけでなく、具体的な相談先や問題解決事例を知り、現状が変えられるという可能性を知る必要があること、(3)「問題」に向き合う心構えを考える機会が必要であること、などを提起し、弁護士に対しては、(1)出張授業・出張セミナーに協力すること、(2)アルバイト労働相談などをキャンパスで実施すること、(3)学生部・キャリアセンターの職員など大学と連携し、専門家として協力すること、などを要望しました。

成田さんは、労働教育研究会の依頼を受けて実施した高校生のアルバイト実態調査(2年生対象、回答35校1311人の調査)と、高校生のアルバイトに対する学校の対応調査(回答91校)の結果を紹介し、51.8%の生徒にアルバイト経験があり、コンビニ・スーパー、ファストフード、ファミレス、居酒屋で働いている生徒が多いこと、アルバイトで得たお金は「交際費」が最も多いが、「学費」「進学費用」「家計の足し」「部費」も少なくないこと、アルバイト経験者のうち63%がおかしいと思ったことを体験していること、一方、学校側は、アルバイトを禁止している学校は1校のみで、多くは許可制・届出制であるが、アルバイトをする際に指導している学校は13校と少なく、基本的なワークルールを教える学校全体の取り組みをしているのは10校であることを明らかにし、この2つの調査から、(1)学校で生徒たちのアルバイトに関与する必要性があり、学校が子どもたちのワンストップサービスになること、(2)困ったことがあったときの相談窓口が必要であること、アルバイトと学業との「ワークライフバランス」を教える必要があること、(3)嫌なことを嫌といえるような人間関係を構築できるコミュニケーション能力を身につけさせること、(4)職場の環境を自分たちで変えていく力を育成する必要があること、などを課題として提起しました。

神部さんは、大学生の首都圏学生ユニオン、高校生の首都圏高校生ユニオンの結成に関わったことや、若者の労働相談と団交に関わっている経験から、ワークルールを伝えるだけでは職場では行使できない現状があることを踏まえ、映像を交えながら、営業成績の良くない社員にケツバットをする不動産会社、おでんや恵方巻きなどノルマを課し、売れなかったら各自に責任を取らせるコンビニ、制服を着替えさせ、連絡引き継ぎをしてからタイムカードに打刻させるスーパーや牛丼チェーン、アルバイトにバイトリーダーなどの名ばかり責任者にして働かせる企業など、若者が不当な扱いを受けている労働実態を紹介しました。そして首都圏青年ユニオンでは、職場を自ら変えたいという人に対しては一緒に団交を行い、労働組合の立場から、働く者の権利を守る取り組みをしていることを紹介しました。

水口さんは、第二東京弁護士会として都立高校2校、大学2校でキャリア教育の一環で出張授業をした経験を紹介し、生徒参加型の授業をしたところ、生徒も積極的に参加をしてくれたこと、トラブルに対してどう解決するのかまでは時間的に難しいが、労働法の知識のない高校生にワークルールを教えるとともに、就職して職場の中で対応できるようにするためのフォローアップができるシステムをどうするかが課題だと指摘しました。

淺野さんは、全国の弁護士会を対象に行ったワークルール教育に関するアンケート結果を紹介し、各弁護士会で、大学・専門学校・高校で出張授業等に取り組んでいること、オリジナルのテキストを作成したり、寸劇を取り入れたり、工夫をして取り組んでいることを紹介、今後は教育委員会等行政にも働きかけ、問題意識を持ってもらう必要があることを課題として指摘しました。また、ワークルール教育の広がりは限定的であるとし、自身が関わっているNPO法人職場の権利教育ネットワークが始めたワークルール検定について紹介しました。

和田さんは、ある地方大学で就職したときに役立つような知識や対応方法を教えるワークルール教育をしてほしいと依頼され、行った授業を紹介し、労働契約は民法の契約の考え方が根本にあることを理解する必要があること、企業の使用者側にもワークルールを身につけた労働者を採用することは、長い目でみたときに企業にとってもメリットがあることを啓発していきたいと話しました。

6人の発表を受けて、ディスカッションが行われました。その中では、どのように労働法の知識を学生・生徒に身につけさせることともに、権利の実現すなわち職場で理不尽なことがあったときにどのように対応していく力を身につけさせるのかをめぐって意見交換が進められました。
上西さんは、働いていて「おかしいこと」と思う感覚と、その「おかしいこと」はこう言うことだと弁護士などの専門家がしてきすることが、学生には励みになり、「おかしいこと」が自分なりに納得できることが大事ではないか、と述べましたが、学生・生徒が知識を獲得するさいの専門家の役割は、重要な指摘だと思いました。そして、違法と知りながら学生たちが声を上げない現状に対して、知識や法律だけでなく、ユニオンなどでの相談から解決にいたる具体的な道筋を示すことが重要だと語りました。
成田さん、不当な扱いを受けていても、それを自分自身で気づいていない可能性があり、まずおかしいことを「おかしい」と思える感覚と、教員が相談に乗り、それを専門家につないでいくことが大事だと語りました。そして、職場の環境を自ら変えていく力を身につけさせていくことが大事であり、それは学校生活の中で日頃から、何か困っているときに、それをそのままにしておくのではなく、自分たちで何かしていく力を身につけさせることで育まれるのではないか、と述べていました。私は、もう少し具体的に、生徒会活動の活性化を図り、三者協議会で取り組まれているように、生徒が自分たちの要求をまとめ、教員や保護者と協議をしていく活動の中で、協同の力を育むことが、社会に出たときにも活かされていくと思っています。そのことが、上西さんが指摘していたように、学生たちは誰かが何かをしてくれると思っている学生が多い状況を変えることにつながっていくと思います。
神部さんは、当事者だけでなく、保護者や先生、周りの大人と一緒に考えていく場が必要 だ、と述べ、組合の団体交渉は、ワークルールを実践的に学びこうししていく場になっていることを指摘しました。そして労働相談のあった若者たちに、職場の問題を他人事ではない、自分のこととして、どう生き、働いていくのか、闘うことのメリット・デメリットをはっきり伝えたうえで、闘うなら仲間と一緒にやることを伝えているとし、職場を作りかえていく主体性が重要であるとの指摘は説得力がありました。
ワークルール教育、そして実際の労働紛争の中で果たす弁護士の役割は大きなものがあることが改めて確認できたのはよかったと思っています。

フロアからの発言を求められたときに私も、高校現場で労働法教育、ワークルール教育がまだ不十分な状況にあるのは、キャリア教育の中でワークルール教育を行う必要性が認識されていないこと、NPOや弁護士などと連携して進めていくことなども教員養成の段階で、進路指導の中で学生たちに教えていくことも必要ではないか、と意見を述べました。
日本労働弁護団では、2013年にワークルール教育推進基本法の制定を提言し、昨年11月には、第1次試案を発表しています。労働弁護団は、ブラック企業などが社会問題になるのは、労働法などワークルールへの理解がかけているからであるとし、推進法を制定したうえで、国や自治体が財政上の措置をとり、学校や職場でのワークルール教育の推進などを義務つけるべきだとしています(朝日新聞デジタル、2016年1月6日)。
ワークルール教育のあり方については、推進法の制定を求めていくとともに、今後も議論を深めていく必要があると思っています。


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三鷹の一日
2017/01/09 20:36

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