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zoom RSS 「戦争絶滅受合法案」に何を学ぶか

<<   作成日時 : 2014/07/06 09:11   >>

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第一次世界大戦(1914年〜18年)が終結して10年後の1929年(昭和4年)、ジャーナリストの長谷川如是閑 は、雑誌『我等』(1929年1月号)の巻頭言に「戦争絶滅受合法案」を書きました。
如是閑は、世界は再び戦争の危険に脅かされつつある、と指摘し、そのあとは架空の話になりますが、その危機から距離を置いているのはデンマークくらいであり、同国のフリッツ・ホルム陸軍大将なる人物が戦争を抑止するために「戦争を絶滅させること受合ひの法律案」を起草し、各国に配布、採用するように訴えている、としています。 
その趣旨は、「戦争が始まったら10時間以内に、国家元首、大統領、国家元首の親族で16歳に達した男性、総理大臣・大臣・次官、戦争に反対しなかった国会議員、戦争に反対しなかった宗教家を最下級の兵卒として召集し、最前線に送るように定める」というものです。さらに当人たちのみならず、その「有資格者の妻、娘、姉妹などは、戦争が続く間、看護婦又は使役婦として召集し、最も砲火に近い野戦病院に勤務させる」 というものです。

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、『東京新聞』2014年7月5日付朝刊

如是閑は、世界各国がこの法案を成立させれば、世界から戦争がなくなること “ 請け合い ” という思いを書いたものですが、『東京新聞』2014年7月5日付朝刊「こちら特報部」は、安倍内閣による秘密保護法の制定、集団的自衛権行使容認の閣議決定と、この国にきな臭さが増している現在、この如是閑の「戦争絶滅受合法案」に何を学ぶかを問うています。
山領健二さん(神田外語大学名誉教授)は、1928年は、共産党員が一斉検挙された3・15事件が起き、関東軍が「満州」への勢力拡大をねらい奉天軍閥の張作霖を暗殺するなど、軍国主義の動きが強まる一方、関東大震災からの復興や昭和天皇の即位の礼でどこか浮かれた雰囲気もあった状況の中で、如是閑はベテラン新聞人として、時代はいつの間にか変わること、日本人の「政府を疑わない」「既成事実に弱い」という特質を熟知しており、ファシズム台頭の流れに警鐘を鳴らそうとしていた、と指摘しています。
また、ジャーナリストの仁木啓孝さんは、「このコラムの内容は、私たちが憲法を考える際の原点を示しているともいえる。憲法は政治家がやってはいけないことを国民が突きつけるもの」だとし、国民にとって、最も大きな災難は戦争で、政治家たちに「戦争をするなら、オマエたちが先頭に立て」と命じるのは当然のことだ、「この法案自体は架空だが、いまの政権に対してあるべき国民の構えを説いている」と評価しています。

この「戦争絶滅受合法案」が発表された4年後の1933年には、日本は国際連盟を脱退して国際的孤立の道を進み、37年には日中戦争、41年には太平洋戦争に突入し、日本は「戦争絶滅」とは真逆の道を進んでいきました。

安倍内閣が集団的自衛権の行使容認を閣議決定した7月1日前後から、ツイッターでは、若者を中心に、「戦争をするなら、安倍から行け」という声が広がっています。
たとえば、「集団的自衛権 "これ決めた人がまず行けばいいのにね。"・・・我が息子(12)の素朴な疑問。」(伊原剛志)、「あべしねまじあべしね?なんなん?あべ戦争したいなら1人で戦争しろ。なんなん?漢字わからんぞ?あべの漢字わからん。どーしたら僕たちは憲法を守れるんですか?なんで勝手に決めるん?なんで国民の意見聞かんが?あべ本当なにわからんぞ?」(つっちゃん)、「ほんとさ、お前らは戦争に行かないからいいだろうけどさ。いやや。戦争なんていやや。デモ行きたいデモ行きたい」(くめじま)、「わたしもデモ行きたいなー右翼左翼とかじゃなくてそれ以前に。支持した政治家さん達から最前で戦争行ってくれるなら良いよ?絶対行かないよね(´Д` )」(かなこ)、「官邸前の抗議デモ参加したい! あべさんほんとになにしてるの 戦争あなたが行ってくださいよねぇ 」(和え)。

安全保障の問題はどうしても国民の生活とはかけ離れた「空中戦」になりがちでしたが、若者たちの間では、この集団的自衛権の問題を機に、自分たちの生命と未来の問題になりつつあるように思います。
「集団的自衛権いらんだろ 破棄しろよな 何が国民の安全守るだよ 徴兵令復活する可能性あるからなこれ 戦争に行くのは未來を担う若い世代だからな、日本の未來を潰す気かよ 本当(# ゜Д゜」(G.メイ)、「僕の周りでも、これまで安全保障に全く興味のなかった女性の先輩に『集団的自衛権ってやつがあると、兄弟が戦争に連れてかれたりするの?』と聞かれました。賛否はともかく安全保障について自分のこととして考えるようになった大学生は多いと思います」(植田・神奈川自衛隊カレッジ防衛モニター)。

そして安倍内閣が集団的自衛権の行使容認を「閣議決定」した7月1日、防衛省・自衛隊が全国の18歳を対象に募集案内を送りつけ、高校生や保護者から「『召集令状』が来た」と怒りや不安の声があがっています。ツイッターを見ると、たとえば「自分の名前が書かれた自衛隊募集のハガキがきてた 徴兵かとおもった 」(AAAwith山中将人)、「それ来ましたよ!中3の男の子の家に!(◎_◎;)生徒が私のところに血相変えて持ってきました。グレーの封筒。中身は自衛官募集。”自衛隊募集の手紙にCMに、さすがにぞっとした。ほんとに。” 」(エリン)、「集団的自衛権が容認された次の日に自衛隊募集の封筒家に届いたがやけど(笑)」(りょーじろ)、「「え?なになに俺様に戦場に出て戦えって?笑安部さん冗談キツイっすよ笑」(ながりょーA2) 等々。

自衛隊の募集案内は、住民基本台帳で全国の18歳の住所を調べて、7月1日以降送付しています。昨年まではそれほど大きな声にはならなかったのが、今年は受け取った高校生の感じ方がまったく違っているようです。「戦争」や「徴兵」が、彼/彼女にとってリアルになっているように感じます。

防衛省・自衛隊は、自衛隊募集の手紙の送付とともに、7月1日から人気アイドルが出演する自衛官募集のテレビCMを始めるなど、大がかりな募集作戦を展開しています。AKBアイドルの起用で話題になっているとはいえ、今年も救助訓練や災害派遣の映像が中心で「軍隊色」を脱色しています。こうしないと集まらないからですが、ある高校生のツィッターに「あたしらには抵抗権あるよ٩(*`д´*)۶ 自然権は一部信託しただけやけんねっ!よし、いこ。デモしにっ🏃💨」(のぞみ♡)とあるように、若者たちが、自衛官募集に影響されず、戦争反対デモに普通に参加する感覚をみんなが持つようになったら、日本の未来は大きく変わるように思います。

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7・5ファシズム許すな!安倍政権打倒デモ(https://
pic.twitter.com/Kg5riukMpK)

*長谷川如是閑「戦争絶滅受合法案」(『我等』第11巻第1号、1929年1月号)
 世界戦争が終つてまだ十年経つか経たぬに、再び世界は戦争の危険に脅かされ、やれ軍縮条約の不戦条約のと、嘘の皮で張つた太鼓を叩き廻つても、既に前触れ小競り合ひは大国、小国の間に盛に行はれてゐる有様で、世界広しと雖も、この危険から超然たる国は何処にある? やゝその火の手の風上にあるのはデンマーク位なものだらうといふことである。
 そのデンマークでは、だから常備軍などゝいふ、廃刀令以前の日本武士の尻見たやうなものは全く不必要だといふので、常備軍廃止案が時々議会に提出されるが、常備軍のない国家は、大小を忘れた武士のやうに間のぬけた恰好だとでもいふのか、まだ丸腰になりきらない。
 然るに気の早いデンマークの江戸ツ子であるところの、フリツツ・ホルムといふコペンハーゲン在住の陸軍大将は、軍人ではあるがデンマーク人なので、この頃「戦争を絶滅させること受合ひの法律案」といふものを起草して、これを各国に配布した。何処の国でもこの法律を採用してこれを励行したら、何うしたつて戦争は起らないことを、 牡丹餅ぼたもち 判印で保証すると大将は力んでゐるから、どんな法律かと思へば、次ぎのやうな条文である。
「戦争行為の開始後又は宣戦布告の効力の生じたる後、十時間以内に次の処置をとるべきこと。
 即ち左の各項に該当する者を最下級の兵卒として召集し、出来るだけ早くこれを最前線に送り、敵の砲火の下に実戦に従はしむべし。
一、国家の××(元首)。但し△△(君主)たると大統領たるとを問はず。尤も男子たること。
二、国家の××(元首)の男性の親族にして十六歳に達せる者。
三、総理大臣、及び各国務大臣、并に次官。
四、国民によつて選出されたる立法部の男性の代議士。但し戦争に反対の投票を為したる者は之を除く。
五、キリスト教又は他の寺院の僧正、管長、其他の高僧にして公然戦争に反対せざりし者。

上記の有資格者は、戦争継続中、兵卒として召集さるべきものにして、本人の年齢、健康状態等を斟酌すべからず。但し健康状態に就ては召集後軍医官の検査を受けしむべし。
上記の有資格者の妻、娘、姉妹等は、戦争継続中、看護婦又は使役婦として召集し、最も砲火に接近したる野戦病院に勤務せしむべし。」

 これは確かに名案だが、各国をして此の法律案を採用せしめるためには、も一つホルム大将に、「戦争を絶滅させること受合の法律を採用させること受合の法律案」を起草して貰はねばならぬ。(一九二九、一、一)
  (底本:『長谷川如是閑集』第2巻、岩波書店、1989年)

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